秋田のニュース

<始動 秋田1農協構想>(中)響く低金利/利益減備え基盤強化

新潟県農協中央会が入るJA新潟ビル。低金利政策の影響を背景に、より広域な合併を進める動きが全国に広がる=新潟市

 秋田県内の全14農協を2024年度をめどに合併して1農協を目指す方針が、11月の県農協大会で決まった。正組合員9万人規模の全国トップ級の巨大組織を狙う。1県1農協は1999年以降に奈良、島根、香川、沖縄の各県で誕生し、その後も西日本で同様の動きが相次ぐ。東日本の先陣を切って秋田で始動した1農協化構想は、経営基盤の強化を主眼としながらも実現へのハードルは高い。(秋田総局・渡辺晋輔)

 「農協の基盤は揺らいではならない。合併で最高の営農指導体制を構築できる」
 11月20日に新潟市で開かれた新潟県農協大会は、県内全24農協を5年後をめどに5農協に統合する構想を決議した。記者会見した県農協中央会の今井長司会長は合併効果を強調した。
 地域的なまとまりのある上越、中越、下越、佐渡に加え、ブランド米産地の魚沼の計5地区で再編する。最も規模が大きいのは新潟市を含む下越地区だ。
 下越地区の10農協が統合すれば正組合員6万1000人、貯金額7200億円の規模になる。2015年に県1農協となった島根県農協(正組合員6万5000人、貯金額9846億円)に近い数字だ。

<信用事業厳しく>
 一般的に、農協経営は信用・共済事業の黒字が農産物の委託販売や生産資材購買を含めた経済事業、営農指導事業などの赤字を下支えする構造にある。しかし低金利政策の長期化で、信用事業は厳しさが増す。
 新潟県では農協の事業総利益が1995年をピークに減少している。県中央会は「経営が悪化すればサービスは低下し、さらなる悪化につながる」と負の連鎖に危機感を募らせる。
 五味川剛・合併担当部長は「合併すれば必ず良くなるわけではないだろうが、人、モノ、金の経営資源を再配分して組織と経営を強化する。その意味で効果的だ」と話す。
 新潟は5農協化だが、全国では1県1農協を目指す動きが表面化。1農協は99年の奈良県を皮切りに現在は4県あり、山口県は2019年4月の発足を予定する。

<30億円超見込む>
 秋田県は24年度の実現に向けて動きだし、福岡や福井、宮崎、和歌山の各県でも模索が始まった。中には貯金総量2兆円を大きく上回る規模の1農協化計画もある。
 横浜国立大の田代洋一名誉教授(農業政策)は「虎の子の信用事業の金利低下を合併による貯金総量の増大で補おうとしている」と説明する。
 だが、農林中央金庫は農協などから集めている預金の金利を来年から段階的に引き下げる意向を示している。信用事業が経営を下支えする効果は確実に薄れていきそうだ。
 秋田県農協中央会によると、県内の農協経営は26年度に計30億円超の損失が見込まれる。さらなる利益の減少を見据え、合併構想で営農・経済事業の機能強化を前面に出す。
 1農協化で苦境を乗り越える道は開けるのか。県中央会の井上善蔵副会長は「『農協にこのまま頼っていいのか』という組合員の不安感を今こそ拭い去ることが必要だ」と訴える。


関連ページ: 秋田 経済

2018年12月20日木曜日


先頭に戻る