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<18みやぎ回顧>(4)交番襲撃・警察官刺殺事件/動機見えず広がる波紋

ブルーシートに覆われた事件直後の東仙台交番。業務が約1カ月半にわたり休止した=9月19日

 東日本大震災から8年目となった2018年、宮城県内では行政に対する信頼をゆるがせるミスやトラブルが相次ぎ、尊い人命が失われる事件や事故も後を絶たなかった。紙面を飾った主な出来事を、最前線で取材に当たった記者が振り返る。

 「僕らにも事件を起こす可能性があったかもしれない」
 11月5日夕、清野裕彰警部補=当時(33)、巡査長から2階級特進=が元大学生の男=当時(21)=に刺殺された仙台市宮城野区の仙台東署東仙台交番。業務を再開して間もない交番を訪れた2人の男子大学生は静かに黙とうをささげた後、取材にこう語った。
 友人が少なく、無口とされる男に自分が重なるという2人。「単に『個人の犯行』で片付けたくない」と、事件の背景を学生同士で考える会を設立した。何が暴挙に駆り立てたのかを真剣に考える若者らの姿に、事件が広げた波紋の大きさを感じた。
 地域防犯の拠点で起きた惨劇は全国的な注目を集めた。生前の男の素顔に迫ろうと、地元になじみのない報道関係者が遺族や大学関係者の自宅を訪ね、配慮を欠く取材を重ねているとの苦情も耳にした。
 今月4日未明、仙台市の私立高3年の男子生徒(18)が仙台南署に包丁を持ち込み逮捕された。幸い重大事態には至らなかったが、「またか」と思わずにはいられなかった。動機不明の事件が残した薄気味悪さは今も消えない。
 命の危険と隣り合わせの警察業務の過酷さも再認識した。事件後、東仙台交番は防犯カメラを設置し、机の配置などレイアウトも変えた。不審者の侵入防止目的との説明だったが、実際には「事件を思い出さないように」(捜査幹部)と、勤務する警察官の精神的負担を軽減させる意味合いが大きいという。
 ローテーション職場の交番では、巡り合わせ次第で別の警察官が事件に巻き込まれた可能性もある。ある警察官は「自分だったらと思うとぞっとする。“平和ぼけ”していたかもしれない」と自戒する。だが、予期せぬ危険の回避を警察官の自覚だけに委ねるのは、あまりにも酷だ。
 警察官も地域も安心できる交番の在り方を、事件があった宮城でこそ構築すべきだ。近隣住民の信頼も厚かった警察官の死を無駄にしてほしくない。(報道部・鈴木悠太、荘司結有)

[メモ]9月19日午前4時すぎ、仙台市の元大学生の男が「現金を拾った」と東仙台交番を訪ね、応対した警察官を剣鉈(けんなた)で刺殺、別の警察官の銃撃で死亡した。県警は11月下旬、殺人などの疑いで男を容疑者死亡で書類送検し、仙台地検は19日、不起訴とした。


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2018年12月21日金曜日


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