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<始動 秋田1農協構想>(下)進まぬ集約/巨額赤字問題 影響も

秋田県農協大会であいさつする船木会長。組合員の中には1農協化の弊害を懸念する声もある=11月28日、秋田市

 秋田県内の全14農協を2024年度をめどに合併して1農協を目指す方針が、11月の県農協大会で決まった。正組合員9万人規模の全国トップ級の巨大組織を狙う。1県1農協は1999年以降に奈良、島根、香川、沖縄の各県で誕生し、その後も西日本で同様の動きが相次ぐ。東日本の先陣を切って秋田で始動した1農協化構想は、経営基盤の強化を主眼としながらも実現へのハードルは高い。(秋田総局・渡辺晋輔)

 2024年度をめどとした1農協化に向けて動き始めた秋田県内の農協。合併構想は今回が初めてではなく、ここ10年は5農協化を目標にしてきた。しかし、現実とは開きがあった。
 5農協化構想は09年の県農協大会で決まった。当時の各単位農協が自己資本100億円規模の達成を目指し、基準額に達した秋田おばこ(大仙市)と秋田しんせい(由利本荘市)の2農協は単独で存続。県北、県央、県南の3地区で合併協議を進めるはずだった。
 県北では、かづの(鹿角市)、あきた北(大館市)、鷹巣町(北秋田市)の3農協が合併協議をしていた。このうち、鷹巣町は2期連続の赤字に陥った同じ北秋田市のあきた北央農協の救済を優先させ、今年5月に合併契約に調印。協議は休止している。

<揺れる「おばこ」>
 単独で残る優良農協の足元も揺れる。コメの集荷量日本一を誇った秋田おばこ農協で昨年9月、コメの直接販売で多額の負債が発覚。赤字額は63億円超に上り、赤字隠しや理事会が機能不全に陥っていた問題も明らかになった。
 17年度決算で当期損失50億2600万円を計上。自己資本比率は前年度の11%台から6.05%に急落した。JAバンク基準で2年以内に8%以上への改善が求められる「レベル1」すれすれの水準で、経営再建が喫緊の課題だ。
 おばこ農協は、正組合員が約2万3000人と県内最大だ。県内の農協関係者は「自己資本比率を1%引き上げるにも分母が大きすぎる」と懸念する。時期が重なるように1農協化構想が浮上したため、県農協中央会は「おばこ救済のためではない」と否定する。

<「身の丈経営を」>
 1農協への合併スケジュールでは19〜21年度を事前準備期間として課題を整理し、22、23年度が最終合併協議期間になる。自己資本比率などの財務目標は今後決めるが、おばこ農協の5年間の経営改善計画の最後となる22年度でも自己資本比率は8.51%と低い。
 県農協中央会の船木耕太郎会長は「経営改善されれば合併参加に問題ない」との考えを示す。ただ、優良農協だったはずのおばこ農協の信用が失墜した事態は今後に影を落としかねない。
 動きだした1農協化に、組合員から疑問の声も上がる。大潟村の専業農家男性(64)は「各農協が抱える課題や事情は異なる。総代会での意思決定が難しくなる。身の丈に合う経営規模にすべきだ」と訴える。
 別の農協関係者も「合併してもじり貧の状況を共有するだけだ」と手厳しい。
 秋田県立大生物資源科学部の長浜健一郎教授(農業経済学)は「人材や経営を考えれば合併は『あり』だ」と話す。「1農協化は壮大な実験。相互扶助の精神がなく単なる合理化では農協としての体をなさなくなる」とくぎを刺す。


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2018年12月21日金曜日


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