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<東北の本棚>日本思想の本源を探究

◎村岡典嗣 水野雄司 著

 東北帝大(現東北大)日本思想史学科の初代教授を務めた村岡典嗣(つねつぐ)(1884〜1946年)、その学問の系譜と生涯をつづった。代表作「本居宣長」は宣長研究の古典的名著とされる。明治から昭和へ、戦争の時代を生き抜き、ぶれることなく「日本思想」の本源を探究した。
 生まれは東京・浅草。父親経営の牛乳会社が牛の疫病などに遭い負債を抱えた。貧しさ故、幼少期は母方の親戚、神田の佐佐木家に寄宿した。当主は歌人で国文学者の佐佐木弘綱。伊勢(三重県)の出身で、本居宣長と故郷を同じくする。育った環境が、後の人生に大きな影響を与えたのは間違いない。
 旧開成中(現開成高)から早稲田大に進学。当時人気作家でもあった坪内逍遙(しょうよう)が教壇に立つ。坪内は、江戸時代以来の勧善懲悪の読み物を否定、「物のあわれ」「人間の情欲」を描く宣長に、自らの文学論の先駆を見る。村岡は熱心な聴講生だった。
 大学卒業後、日本にあるドイツ系新聞社で働きながら「本居宣長」を出版した。時に26歳。600ページの大作で、宣長の生い立ちから、「古事記伝」の完成、亡くなるまでを追った。まず、主観を排除し、作者の思いを資料から忠実に読み解く。次にそれが歴史的にどうつながっていくかを描き出す。「古事記」を読み解く宣長の姿勢から、村岡は日本思想史学の方法論を学んだと言える。
 39歳で東北帝大に着任、日本思想史学会を創設する。日露戦争から太平洋戦争まで、戦争と並走しながら「日本」「日本人」を考え続けた村岡。敗戦の原因を「日本精神が過剰に喧伝(けんでん)され、自己陶酔に陥り、世界情勢の把握を誤った」と分析した。終戦の翌年、61歳で死去。
 著者は1976年仙台市生まれ。東北大大学院文学研究科(日本思想史)博士課程修了。一般社団法人倫理研究所(東京)専門研究員。
 ミネルヴァ書房075(581)5191=3780円。


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2018年12月23日日曜日


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