福島のニュース

働く子どもに寄り添う「答えはないけど一緒に考えたい」 郡山・自立援助ホーム24時間密着

子どもたちと会話しながら夕食を囲む江尻さん=17日、郡山市の自立援助ホーム「あい」

 虐待や経済的理由などから、自立を強いられた子どもたちが共同生活を送る「自立援助ホーム」。数少ない職員が懸命に子どもたちを支援し、運営している例が多い。認定NPO法人「青少年の自立を考える会シオン」(茨城県)が今年4月、郡山市に開設した「あい」もその一つだ。泊まり込みで「ホームの一日」を見詰めた。(福島総局・阿部真紀)

◇1日目15時30分
 「あい」はJR郡山駅近くにある。木造2階の一軒家。17、18歳の男女4人が暮らす。うち2人は働きながら高校で学ぶ。
 手助けをするホーム長の江尻飛鳥さん(34)は、仕事が休みの2人が出掛けるのを見送ると、夕食の買い出しに出掛けた。
 鶏肉や野菜など、買い物は20分で済ませた。急ぐのには理由がある。
 「『ただいま』の声に『おかえり』と返したい」。子どもたちの帰宅を待つ「普通の生活を大事にしている」と言う。

◇17時00分
 夕食の準備。合間の会話が大切だ。帰宅した4人はさまざまなことを語る。
 4人は毎月3万円の寮費を自ら稼いだお金で払い、貯金もする決まりだ。
 「バイトの掛け持ちが大変。一つを辞めたいと思っている」。高校に通わず、2カ所で働く男子(18)は正直に打ち明けた。

◇19時30分
 夕食が完成。ご飯とみそ汁、マッシュポテト。ギョーザは記者が手作りした。みんなの反応は「おいしい」と優しい。
 仕事や学校、貯金…。一つ屋根の下、家族のように夕食を囲んで話し込む。
 高校2年の女子(17)は進路を考える時期だ。江尻さんが尋ねると「就職かな。介護とか人の世話をする仕事がいい」と話した。
 江尻さんは子どもたちの意思や選択を尊重する。「やりたいことを望んでいいんだ、という感覚を持ってほしい」と願う。

◇22時00分
 入浴も済ませた4人が自室に戻る時間だ。江尻さんの仕事はまだ続く。気になる言動はなかったかどうか。日誌に様子を記す。
 「就寝できるのは午前0時ごろ。夜間も1人態勢で、子どもが体調を崩すなどトラブル時の対応が心配。宿直のボランティアがいればありがたいのだが」
 江尻さんは学生時代、不登校の子どもたちの電話相談に携わり、同じNPOが地元の茨城県で運営する自立援助ホームに就職した。
 実際の仕事内容は多彩。「生活保護の相談から就労支援まで。想像以上の『何でも屋』に最初は驚いた」と振り返る。

◇2日目6時30分
 「いってらっしゃい」。早朝の仕事に出掛ける男子1人を送り出しながら、江尻さんは朝食の準備を進める。登校する女子らを見送った後も洗濯や、管轄する児童相談所への報告など仕事は尽きない。

◇10時30分
 一息ついた頃を見計らい、どんな思いで働いているかを聞いた。
 「仕事に頑張っていた子どもが突然、『退所したい』と言い出し、落ち込んだこともある」と江尻さん。一人一人が抱える問題などについて「答えはないけど一緒に考えたい。子どもたちには自分次第で、楽しく自由な人生をつくっていけると思ってほしい」と期待を込めた。

◇15時00分
 「あい」は、非常勤を含めて3人が交代で勤務する。勤務時間は正午から翌日午後3時まで。次の職員への引き継ぎをして、1日の仕事がようやく終わる。

<運営費や人材確保課題 休止迫られる施設も>

 児童虐待の認知件数が増加する中、家庭での生活が困難な子どもたちの受け皿となる自立援助ホームへの期待が高まっている。ただ運営態勢や人材確保に頭を悩ませる例も多い。
 全国自立援助ホーム協議会(東京)によると、12月1日時点の加盟ホームは162カ所。東北は宮城4カ所、福島2カ所、岩手、秋田、山形に各1カ所あるが、青森にはない。全国的には増加傾向にあるが、職員を確保できず、休止を迫られるホームもあるという。
 郡山市に4月開設された「あい」も運営は容易ではない。3人態勢のため泊まり業務は1人が1カ月に10回ほど。職員の事情によっては連泊も必要になる。
 運営費も課題だ。国や自治体から支払われるのは子ども1人当たり月20万円程度。食費や光熱費などに充てるのが精いっぱいで、多くのホームが最低限の人員で対応している。


関連ページ: 福島 社会

2018年12月24日月曜日


先頭に戻る