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<18みやぎ回顧>(10)志津川湾のラムサール条約登録/町民と連携し活用策を

ラムサール条約に登録された南三陸町の志津川湾

 国際的に重要な湿地として10月、ラムサール条約に登録された宮城県南三陸町の志津川湾。20年近くの調査研究で明らかになった藻場の多様性に光が当たった。
 東日本大震災の被災地に明るい話題となったのは言うまでもない。だが、登録は行政主導で進められ、町民に条約の価値や意義が浸透していないのが実情だ。
 町議会12月定例会の一般質問では、登録を受けての施策を町に問う声が相次いだ。議員の一人が「鉄は熱いうちに打て」とハッパを掛けたように、宝の持ち腐れにしてはいけない。
 町は2016年の第2次総合計画で「森里海ひと いのちめぐるまち」を将来像に掲げた。震災後、漁業や林業の分野で国際認証を取得し、環境に配慮した持続可能な産業を目指す動きが広がる。条約登録は、町が進める自然と共生したまちづくりに弾みをつける好機といえる。
 登録後、町は担当の農林水産課だけでなく、各部署を横断する取り組みに位置付け、重視する観光面でも活用に向けて動きだした。
 商工観光課は12月、町内の観光や宿泊施設の関係者を集め、条約の活用策を考えるセミナーを開いた。参加者からは藻場や越冬のため飛来するコクガンの観察ツアー、売り上げの一部を保全に役立てるグッズ開発などのアイデアが出た。
 「ラムサールというブランドを生かし、経済が潤う商品やサービスを生み出す必要がある」。講師を務めた同町の一般社団法人サスティナビリティセンター代表理事の太斎彰浩さん(48)は強調する。
 恵まれた自然を地域振興に生かす方策に頭を悩ませるのは、他の登録地も同じだ。国内有数のマガンの越冬地「蕪栗沼・周辺水田」(大崎市など)には県外からツアー客が訪れるが、大崎市の関係者は「市内の滞在時間が短く、宿泊先は仙台市というケースがほとんど」と漏らす。
 国内52カ所の登録地のうち海藻藻場は志津川湾だけだ。食やマリンレジャーを通じ、ここにしかない自然を体感する場としての価値は高い。官民が連携し、活用に向けた具体策づくりが急がれる。
(南三陸支局・佐々木智也)

[メ モ]志津川湾は暖流と寒流が混ざり合う特異な海域で、同じ場所に生息するのが珍しいアラメやマコンブなど200種類以上の海藻が確認される。国天然記念物コクガンの餌となるアマモなどの海草も生え、重要な越冬地になっている。


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2018年12月27日木曜日


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