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<揺らぐ原発城下町>宮城・女川からの報告(下)声なき声 震災を経て空気変わる

再稼働の是非を問う住民投票条例制定を求める1200筆超の署名簿が宮城県女川町選管に提出された=12日

 約半世紀の間、東北電力女川原発と共存してきた宮城県女川町の針路が揺らいでいる。東日本大震災からの復興需要が衰える中、女川1号機の廃炉が決定。原子力規制委員会による再稼働審査は申請から5年となった。原発と復興が支えてきた地域経済と町財政はどこに向かうのか。原発城下町・女川の今を報告する。(石巻総局・関根梢)

 「町の財政は、女川原発1号機廃炉のショックを吸収できるのか」
 東日本大震災のポスト復興を描く宮城県女川町総合計画の審議会。3日の会合で町が示した財政の長期見通しに委員が反応した。

■ 膨張から縮小へ
 震災前に60億円台だった町の歳入規模は震災翌年の2012年度、約13年分の838億円まで膨張した。長期見通しでは国の復興期間が終わる21、22年度に89億円程度まで縮小、23年度以降は震災前の水準に戻ると算定した。
 町の貯金に当たる財政調整基金は10年後の28年度も117億円とほぼ現状を維持するとみる。ただ、廃炉に伴う減収や具体的な事業費は加味しておらず、町の担当者は「不確定要素が多く、危機感を持たなければならない」と警戒する。

■ 暗黙の了解形成
 「誰が首長になっても安定した町政運営を行える体制が必要だ」
 連続10期務め、原発誘致を推進した故木村主税(ちから)元町長の狙いは当たった。
 1号機の建設が本格化した1980年度以降、町には累計250億円超の電源3法交付金が入った。東北電力が納める固定資産税は17年度、約25億円に上った。
 原発マネーは総合体育館、町立病院などの公共施設をはじめ、保育所運営、ごみ収集といった生活密着のサービスにも及んだ。「合併せずに単独路線を貫けたのは原発のおかげ」。暗黙の了解が形成された。
 震災は町の空気を微妙に変えた。
 「声なき声が多数存在することが明らかになった。再稼働は困るという思いの人はたくさんいる」
 再稼働の是非を問う住民投票の条例制定を目指す市民団体「女川町署名活動実行委員会」は12日、町内で集めた署名簿を町選管に提出した。署名数は有権者の21.9%に達する1238筆。宮城県内の自治体で突出する高率に、町内の署名活動を率いた高野博町議は高揚感を隠さなかった。

■ 町民の意思表示
 「親戚が原発関連の仕事をしている」「原発と取引がある」。署名活動は立地自治体ならではの困難にも直面した。「再稼働に賛成だが、住民投票は必要」と応じる町民もいた。
 署名数の評価について、須田善明町長は14日の町議会定例会で「一定数の方々がそういう考えだということは言える」とかわしつつ、「エネルギー政策は全体と個別の視点がある。政治に関わるものは全体的な視野も持たねばならない」と慎重に語った。
 署名活動は原発に対する町民の意思表示だった。高野町議は「自分たちのことは自分たちで決める。その意識が定着すれば、町は変わる」と力を込めた。
 廃炉方針は原発と行政、経済の相互関係に不透明感を生んだ。復興を歩む女川の将来に原発はどう位置付けられるのか。原発城下町が今、揺れている。


2018年12月28日金曜日


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