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<アートで拓く>花巻・光林会とるんびにい美術館(1)変わる/作品通じ活躍の場拡大

一心不乱に色を塗る八重樫さん

 東北初の知的障害者によるアート作品の展示施設「るんびにい美術館」を運営する岩手県花巻市の社会福祉法人「光林会」が今年、設立50周年を迎えた。岩手から世界へ。自らの存在を発信し続ける障害者アーティストと、支え、見守る仲間たちを紹介する。
(盛岡総局・千葉淳一、北村早智里)

<50年以上線引く>
 「いい作品のような気はするが、自信がない」。そう言って光林会の理事長三井(みい)信義さん(65)が差し出したのは、施設利用者が描いた1枚の絵。1998年の春だった。
 画用紙いっぱいに縦、横、斜めの直線が引かれ、線が作る四角形や三角形は鮮やかな色彩で埋まっていた。ダウン症の八重樫季良(きよし)さん(62)の作品だ。
 「素晴らしいです。障害者が描いたなんて信じられない」。鑑定を依頼された若者が応じた。大学で美術を学び、画家を志す青年だった。
 北上市出身の八重樫さんは幼いころから絵が好きで、食事の時間以外はずっとペンを走らせてきた。4歳下の妹智子さん(58)が小学校で使っていた定規を気に入って今の画風が生まれた。
 「季良にとって描くことは楽しむこと」と智子さん。73年4月に光林会の障害者支援施設「ルンビニー苑(えん)」で暮らすようになっても創作活動を続けて50年以上、線を引き続ける。
 かつては「自動車」、今は「建築物」や「家」が作品のテーマだ。施設や実家の改修が強く印象に残って作品化したらしい。一つの主題を徹底的に追求し多作だが、模様や色使いが同じ作品は一つもないという。

<「何よりの成果」>
 98年2月に知的障害者の公募展「いわて・きららアート・コレクション」が始まると、三井さんは八重樫さんの絵を出品。優秀賞を獲得し、2005年には最優秀賞に輝いた。
 1999年には盛岡市内のギャラリーで仲間と作品展を開催。美術家から高い評価を受けた。東京で工事現場の仮囲いの壁画に採用されるなど活躍の場は徐々に広がっていった。
 八重樫さんは今年9月、古里の求めに応じて北上市二子地区交流センターに作品を寄贈した。「見たよ」「すごい絵だね」。近所から寄せられる感想に、智子さんは「季良の存在を知ってもらえてうれしい」と笑顔を見せる。
 98年の春、八重樫さんの才能を最初に見抜いた若者は、後にるんびにい美術館のアートディレクターになる。板垣崇志さん(47)だ。
 「障害者アートは売れることだけが自立への道ではない」と板垣さん。「作品を通じて地域に隣人として受け入れてもらうことが何よりの成果」と実感している。

[るんびにい美術館]2007年11月開館。館名は仏教を開いた釈迦(しゃか)の生誕地に由来。1階にギャラリーとカフェ、2階にアトリエがある。入館無料。開館は午前10時〜午後4時半で、水曜、第4火曜定休。連絡先は0198(22)5057。


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2018年12月28日金曜日


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