秋田のニュース

<洋上風力発電所>秋田・由利本荘沖の計画に期待と不安

レノバが開いた4日の住民説明会。賛成、反対それぞれの立場から意見が飛び交った

 秋田県由利本荘市沖に計画されている日本最大規模の洋上風力発電所について、住民の間で賛否が分かれている。漁業への好影響や経済効果を期待する声がある一方で、低周波音による健康被害などを懸念する市民らは計画撤回を求めるなど反発を強めている。洋上風力の普及に向け、国が定める「促進区域」に選ばれることが有力視されている秋田の現場を取材した。
(秋田総局・佐藤駿伍)

◎歓迎派 観光振興漁業にも好影響/反対派 低周波音で健康被害訴え

<見学者3000人試算>
 再生可能エネルギー開発のレノバ(東京)は4日、同市で2回目の大規模な住民説明会を開いた。市民ら約300人が参加した。
 同社は計画が実現すれば年間約100万トンの二酸化炭素削減効果があると説明。見学や視察に年間約3000人が訪れると試算し、観光にも貢献すると説く。漁業への好影響をもたらすとの考えも示す。
 2年前に運用を始めた長崎県五島市沖の浮体式洋上風力発電では、風車の海中部分をサンゴなどが覆い魚を集める効果があった。市の担当者は「漁業者と一体で運用している。定期的な漁獲調査、潜水調査でも成果が表れている」と話す。
 由利本荘にレノバが計画するのは、風車の基礎を海底地盤に埋め込む着床式施設。同社は五島市などの例を挙げ、海底地盤に立つ柱の部分に藻が付きやすい塗装をし、周辺一帯に藻場を形成して魚が育つ環境をつくることを目指すという。
 由利本荘市の漁業井上晴三さん(71)は「魚が取れるかどうかは死活問題。新たな漁場ができるかもしれない」と期待する。洋上風力発電は全国に先駆ける産業になり得るとし、「人口減などで閉塞(へいそく)感のある由利本荘の将来のためにも事業を進めるべきだ」と話す。

<「実験場のよう」>
 計画に否定的な住民の間には、風車から出る低周波音による健康被害などを心配する声が根強い。低周波音は周波数が100ヘルツ以下で、人の耳ではほとんど聞き取ることができない。継続的に浴びることで睡眠障害やめまいなどの症状が出る可能性があるとされる。
 「どこも風車だらけ。まるで人体実験場のようだ」市民団体「由利本荘・にかほ市の風力発電を考える会」の佐々木憲雄会長(71)は、既に陸地に大きな風車が立ち並ぶ由利本荘市の状況に表情を曇らせる。
 市生活環境課によると、由利本荘は(風力発電にとっての)風の吹き方が良いといい、地元からの積極的な誘致もあって出力20キロワット以上の風車60基が稼働している。今回の洋上風力発電所など手続き中の計画を含めると150基以上に上る。
 佐々木さんは「既存の風車周辺でも睡眠障害などを訴える住民がいる。複数の風車による影響などについて環境アセスメントの基準よりさらに厳しく調査すべきだ」と訴える。
 反対派の住民からは「各地で低周波音による訴訟が起きている」「少しでも健康被害の可能性があるならば計画を撤回すべきだ」などの声が相次ぐ。

<「しっかり評価」>
 レノバは低周波音は風車特有のものではないと前置きし「騒音、低周波音ともに(影響を)しっかりと評価し、他社の風車も含めた累積影響も可能な限り評価する」と説明。厳しい目を向ける声にきちんと向き合っていく姿勢を見せる。
 4日の説明会で須山勇副社長(52)は「健康被害が出るとなれば事業は進めない」と約束し、「今後の調査についてごまかすことは一切しない。住民の方々の理解がなければ事業はなし得ない」と強調した。

[由利本荘市沖洋上風力発電事業] 由利本荘市沖の沿岸から1〜4キロの沖合に南北約30キロにわたり8000〜9500キロワット級の着床式風車70〜90基を設置する計画。総出力は約70万キロワットで総事業費は約4000億円。2021年から着工、24年から順次発電開始予定。


関連ページ: 秋田 経済

2018年12月28日金曜日


先頭に戻る