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<アートで拓く>花巻・光林会とるんびにい美術館(3)興す/互いに敬意持てる場に

るんびにい美術館に展示された作品を紹介する三井さん

 東北初の知的障害者によるアート作品の展示施設「るんびにい美術館」を運営する岩手県花巻市の社会福祉法人「光林会」が今年、設立50周年を迎えた。岩手から世界へ。自らの存在を発信し続ける障害者アーティストと、支え、見守る仲間たちを紹介する。(盛岡総局・千葉淳一、北村早智里)

 花巻市の社会福祉法人「光林会」が障害者教育にアートを取り入れたのは、今から30年前だった。知的障害児施設「ルンビニー学園」の児童指導員で、後に法人の理事長となる三井(みい)信義さん(65)が、趣味の陶芸を「子どもたちにも」と持ち込んだ。

<時間を忘れ熱中>
 コミュニケーションの苦手な落ち着きのない子どもたちが、土をこね始めると時間を忘れて作陶に熱中した。
 人の顔で型を取った「お面」? 長く延ばした粘土を渦巻き状に積み重ねた「花瓶」? 「それらしき物」としか呼べない作品群だったが、手だれの品とは一線を画した自由な発想にあふれていた。
 「美しさや形の固定概念を持たないところにこそ障害者の才能がある。彼らの内なる表現力を引き出せば、それがアートだ」と三井さん。絵画や織物の制作も取り入れ、週1回の美術クラブが発足した。
 ただの「落書き」。当初は冷ややかな視線を向けていた施設の職員仲間も、作品が公募展で入賞を重ねるにつれ、見る目を変えていった。
 周囲の評価が高まると「絵を見たい」との問い合わせも増えていく。作品を通じて表現される障害者のエネルギーを感じてもらいたいと2007年11月、るんびにい美術館を開館した。

<地域との懸け橋>
 法人は今年、創立50年を迎えた。東北初の知的障害者向けグループホームを開設するなど、利用者の生活と自立を支え続けている。
 「半世紀前までは障害のある家族を人前に出さず、自宅奥の部屋『座敷牢(ろう)』に閉じ込めることもあった」。そんな時代に世の中を逆戻りさせてはならないと三井さんは訴える。
 「ボーダーレスアート」を掲げる美術館は障害者と地域社会の懸け橋だ。三井さんは、障害者と健常者が一緒に作品を作る施設の整備構想を温めている。
 「私たちがやっているのは、社会の中に障害者の居場所をつくること。互いが敬意を持てる社会を目指し、障害を身近に感じられる機会を提供し続けたい」


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2018年12月30日日曜日


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