岩手のニュース

亡き人を思う「漂流ポスト」「風の電話」役割広がる 被災者以外にも救い

全国各地から届いた亡き人への手紙と「漂流ポスト3.11」
静かに訪れる人を待つ「風の電話」

 東日本大震災で亡くなった人への思いを受け止める「漂流ポスト3.11」(陸前高田市)と「風の電話」(岩手県大槌町)が、役割を広げている。病気、事故、自殺、そして戦争。震災に限らず、目の前から消えた最愛の人に向かって便りをしたためたり、話し掛けたりする人々が絶えない。

 <私は震災にあった者ではありません。私も今の自分の苦しみ、淋(さび)しさ、悲しみを手紙にしてみようと。届くかどうか不安ですが書いてみました>

 <あれからもう10年も過ぎました。愛してるって言えばよかった。パパ、私がんばっているよ。あなたに感謝しながら一人元気に生きてます>

 漂流ポストは2014年3月にカフェに設置された。手紙はカフェ併設の小屋で公開されている。これまで匿名を含めて約500通を受け取り、定期的に供養している。消印は全国に広がっている。
 がんで夫を亡くした長井市のパート福盛広美さん(56)も16年10月、思い切って手紙を投函(とうかん)してみた。
 「たまった気持ちを吐き出せた」と福盛さん。ポストが縁で交流を重ねるようになった震災遺族から「『あなたの方がつらいわよ』と言われ、救われた気がした」と話す。
 ポストを管理する赤川勇治さん(69)は、予想外の人々からの手紙が多く、当初は戸惑いを覚えたという。今は「寂しさや悲しさは同じ。手紙を書くとき、ペン先に相手の顔が浮かび、自然と会話になる」と考えるようになった。

 <何をなさっていられる時だったのですか、静かにお茶を召し上がることがお好きでしたからそんな姿が目に浮かびます 火の中で苦しまれたのですか、一瞬で亡くなったのですか>

 73年前に広島市に投下された原爆で父を亡くした女性から手紙が届いたのは、つい最近のこと。流産や死産、生まれたばかりの子どもを亡くした経験を持つ親たちでつくるグループからも「手紙を出したい」と相談があった。
 「風の電話」には11年4月の設置以来、約3万人が訪れた。どこにもつながっていない受話器を握り締めて話し掛け、じっと耳を澄ます。海外から訪れる人もいる。
 設置者の佐々木格(いたる)さん(73)は「大切な人が、いつもそばで見守っていると感じることができる。喪失の事実を受け入れ、次のステップに行くきっかけとなる場所。まだまだ必要とされるはずだ」と語る。
 劣化が進んだ電話ボックスは今年、全国からの支援で新調された。今日も、亡き人との語らいを優しく、静かに包み込んでいる。


関連ページ: 岩手 社会

2018年12月30日日曜日


先頭に戻る