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天然の風穴、産業遺産に 「蚕種」貯蔵場に活用

黒森風穴の場所を特定した7月の現地調査

 民間の研究者らでつくる県植物誌編集委員会(白石市)が、山の斜面から夏に冷風、冬には温風が吹き出す「風穴(ふうけつ)」の調査を進めている。白石市小原地区の「黒森風穴」を対象に現状や植生を確認。かつて天然の貯蔵庫として養蚕業や暮らしを支えた各地の風穴の多くが荒廃し、場所が分からないものもあるため、産業や文化的な遺産としての保全を訴える。

 風穴は、主に岩石が積み重なった斜面にできる。編集委によると、黒森風穴は1880年、住民が蚕の卵「蚕種」の貯蔵場所として利用を始め、6棟の小屋で冷蔵業を営んだ。
 蚕のふ化時期を調整することで年1回の養蚕が複数回できるようになり、地域の産業を活発にした。大正時代まで利用されたが、製糸業の衰退や電気冷蔵庫の普及で徐々に廃れ、長らく放置された状態だった。
 編集委は7月中旬にメンバーら16人で小原上戸沢地区の山中にある黒森風穴とみられる場所の現地調査を実施。地区の万蔵稲荷神社に残る小屋6棟が並ぶ絵馬や当事の写真と同じ配置で小屋の石垣の一部、サワダツやバッコヤナギといった風穴でよく見られる植物を確認し、場所を特定した。
 10月下旬には風穴研究の第一人者で駒沢大講師の清水長正さん(64)も調査に参加。清水さんは「6つ並ぶ密集した風穴は珍しい。東北地方でもかなり古い部類に入る」と述べた。
 編集委は2020年5月、風穴の研究者や所有者らが集まる「第7回全国風穴サミット」の東北初となる白石市での開催を目指す。県内では15カ所の風穴が確認され、小原地区に4カ所あるという。
 委員長の上野雄規さん(70)は「風穴は産業遺産としての価値に加え、実用もできる自然エネルギー。東日本大震災で長期間の停電を経験した宮城から先人の知恵を伝えたい」と話す。


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2018年12月31日月曜日


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