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<アートで拓く>花巻・光林会とるんびにい美術館(4完)届ける/能力を発掘 社会に還元

るんびにい美術館のアーティストと記念撮影する松田文登さん(後列左から2人目)、崇弥さん(同3人目)

 岩手県金ケ崎町出身の双子の兄弟松田文登(ふみと)さん(27)と崇弥(たかや)さん(27)には、4歳上で自閉症の兄がいる。5年ほど前まで障害者就労支援事業所に通っていた。
 間仕切りされた約1畳のスペースで、黙々と土木資材の製造、商品の箱詰め作業に従事する。週5日、1日5時間の仕事で月額工賃はわずか。つまらなそうに働く兄の姿が目に焼き付いた。
 「障害者が楽しく働き、仕事を通じて自己実現できる場所をつくれないか」。2015年、花巻市の社会福祉法人「光林会」が運営する障害者アート展示施設「るんびにい美術館」を訪れた。

<ブランド化発案>
 鮮やかな色使いと斬新な幾何学模様。デザインのパターンが北欧の織物を連想させる。当時、東京で働いていた崇弥さんが「デザインをブランド化して売りたい」と発案し、文登さんも賛同した。
 光林会の協力で16年9月、「MUKU(ムク)」ブランドを設立した。
 商品化第1弾はネクタイ。東京・銀座の老舗の紳士洋品店に依頼し、シルクで織り上げた。1本2万3760円と高めの設定ながら「かっこいい」「ネクタイから会話が広がる」と1カ月半で約50本が売れた。
 現在は傘、ブックカバーなど20種類を販売している。花巻市のふるさと納税の返礼品にも採用された。

<福祉 売りにせず>
 「デザインも品質も上質なら適正価格で売れる。福祉を売りにはしない」と崇弥さんは言う。商品価格の3%をデザイン料として美術館に還元し、障害者アーティストに分配する。
 その後も売り上げは順調だ。2人は今年7月、花巻市に商品販売に加えて空間デザインなどを手掛ける企画制作会社「ヘラルボニー」を設立した。東京にも拠点を置き、営業に駆け回る。
 東京都渋谷区では工事現場の仮囲いのデザインに障害者作品の使用が決まり、大手電機メーカーからはオフィス1室の空間デザインを一任された。
 次なる仕掛けは、障害者が適性に合わせて働けるホテル形式の福祉施設開設だ。細かい作業が好きな人は掃除、人と話すことが好きな人は接客を担う。
 「できることに楽しく従事してもらう環境をつくりたい」と崇弥さん。文登さんは「障害の有無にかかわらず、社会の一員として自然に受け入れられることが理想。健常者にはまず、障害とは何かを知ってほしい」と話す。(盛岡総局・千葉淳一、北村早智里)


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2018年12月31日月曜日


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