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<原発事故の教訓>形式的な議論、国会の怠慢

 東京電力福島第1原発事故の風化、原発再稼働への圧力。先の臨時国会で、虚脱感に似た思いが去来する場面に2度出くわした。
 「審査の進捗(しんちょく)の遅れによって再稼働や運用開始が先延ばしになり、住民が国への不信感を持つのではないか。自治体財政、地域経済が悪化している」
 11月29日の衆院原子力問題調査特別委員会。自民党の津島淳氏(青森1区)は地元首長の懸念を紹介し、原子力施設の運転開始に向けた新規制基準適合性審査の迅速化を訴えた。
 地元には審査中の原発や核燃料施設が集中するが、本格操業には程遠い。津島氏は「審査の効率化と高いレベルのキープ。政治家サイドとしてどこに答えを導き出せるのか、考えていかねばならない」と語った。
 原子力規制委員会の更田豊志委員長の記者会見で、この困惑を問うてみた。
 「今に始まった話ではない。審査を始めてすぐに、そういった意見は強く受けている」。2012年の発足当初から携わる更田氏は率直に振り返り「科学的、技術的に厳正、厳格な審査に努めることは一丁目一番地。時間にとらわれて、というのはあり得ない」と断言した。
 専門家の助言機関から意見聴取した12月7日の同特別委も強く印象に残った。
 国会の事故調査委員会で委員長を務めた黒川清氏が「日本の政治家は原発事故から何を学び、何をしようとしているのか、はっきり見えない。世界中が見ている」と鈍い国会を嘆いた。
 国会事故調が12年にまとめた報告書は規制当局や電気事業者に対する監視、被災住民の生活基盤回復など7項目を提言。実現への実施計画の策定も求めたが、国会はいまだ放置している。口先だけの怠慢だ。
 48日間の臨時国会で同特別委の開催はたった3回。審議は計7時間弱にとどまった。立憲民主党の山崎誠氏(比例東北)は「与党も野党もない話だが、政治の駆け引きで1、2回開いてお茶を濁している。国会が責任を持って議論を継続すべきだ」と強調する。
 あれから7年9カ月が過ぎた。福島第1原発が炉心溶融(メルトダウン)し、首都圏では計画停電が断行された。国難規模の災害で得た教訓はどこへ消えたのか。年の瀬の東京で、さんさんと輝くイルミネーションがむなしく映る。
(東京支社・瀬川元章)


2018年12月31日月曜日


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