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<雪と生きる>(2)肘折温泉「ドカ雪・大雪割」(山形県大蔵村)/発想変え人気呼ぶ

過去最高の積雪を更新した肘折地区=2018年2月、山形県大蔵村
大雪の肘折温泉。温泉街の道はきれいに除雪されている=2018年1月

 北国に住む私たちにとって、雪は切っても切り離せない。暖冬の予報でも降る時には降るし、元日から雪かきや雪下ろしに追われている人もいるだろう。どうせなら雪を楽しみ、暮らしの中に生かしたい。そんな知恵や取り組みを、東北各地に探る。

 出羽三山の一つ、月山のふもとにある山形県大蔵村の肘折温泉は、酸ケ湯温泉(青森市)と並び「日本有数の豪雪地の温泉」として知名度を上げている。
 JR新庄駅から車で約45分。湯治場の伝統を守る素朴な雰囲気が魅力だが、もっと大雪をプラスに捉えられないか。
 そうした発想で生まれたのがこの冬、4回目になる「ドカ雪・大雪割キャンペーン」。旅館19軒と商店などが参加して大雪になればなるほど、宿泊料や買い物などが割引になるサービスを展開している。
 ヒントは「雪の多い肘折温泉を見たい」「深い雪の中を歩きたい」という首都圏からの客の声だった。地区には気象庁の地域気象観測システム(アメダス)があり、全国屈指の積雪量がテレビなどで、しばしば紹介されていたからだ。

<無料130人>
 初回と2回目は300センチ以上になったら適用になる「大雪割」だけだったが、それほどは積もらなかったため盛り上がりはいまひとつ。
 そこで昨シーズンは、前日午後3時までの24時間降雪量が30センチ以上あった場合に適用になる「ドカ雪割」を新たに企画。例年にない厳冬となったこともあり、積雪は過去最高の445センチを記録した。
 過去最高になると宿泊無料となり、対象になった人は130人に上った。「大雪割」「ドカ雪割」の二つのサービス合わせて計558人が恩恵を受け、大いに話題を呼んだ。
 つたや肘折ホテル社長の柿崎雄一さん(56)は「雪が多くなると、これまでは客足が減っていた。昨年は大雪のニュースとともに各メディアが割引サービスを取り上げてくれた。『どんな状況なのか』といった問い合わせが多く寄せられ、部屋が埋まった」と言う。

<誘客PR>
 宿泊者の多くが、肘折の冬の日常を会員制交流サイト(SNS)で発信したのも効果的だった。柿崎さんは「除雪された温泉街を子どもたちが普段通りに登校する様子などが紹介され、問題がなく滞在できることをアピールできた」と分析する。
 これまでも村観光協会や地区住民は、大雪を生かしたイベントを次々に打ち出してきた。雪壁にろうそくの灯をともす「肘折幻想雪回廊」や旧肘折小中学校の雪上運動会の名物競技で、3メートル以上の積雪をひたすらスコップで掘り続ける「地面出し競争」などだ。
 「木村屋旅館」代表で、村観光協会長でもある木村裕吉さん(62)は「地元の住民にとっては雪が少ない方が助かるが、ここではあり得ない。大雪を受け入れ、今後も誘客資源として積極的に生かしたい」と語る。(新庄支局・菅野俊太郎)

[肘折温泉]開湯は平安時代の807(大同2)年。肘を折った老僧が湯に入ると、たちまち傷が癒えた−との伝説が残るなど、名前の由来には諸説がある。旅館は全20軒。どこも山菜などを豊富に使った郷土料理を自慢にしている。地区住民は101世帯、264人。


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2019年01月03日木曜日


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