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<雪と生きる>(3)農林産物保管庫「雪室」(宮城県七ケ宿町)/鮮度保ち 価値熟成

リンゴを雪室に運び入れる佐藤さん。貯雪庫(左奥)にはまだ雪が残っている=2018年12月
雪室の中に除雪車で雪を搬入する作業。毎年2月下旬から3月上旬に行われる=2018年3月

 北国に住む私たちにとって、雪は切っても切り離せない。暖冬の予報でも降る時には降るし、元日から雪かきや雪下ろしに追われている人もいるだろう。どうせなら雪を楽しみ、暮らしの中に生かしたい。そんな知恵や取り組みを、東北各地に探る。

 宮城県内有数の豪雪地、七ケ宿町には自然を生かした冷蔵庫がある。大量の雪をため、庫内の温度を年中ほぼ一定に保つ「雪室」だ。リンゴやジャガイモ、コメ、ソバ…。多様な作物が熟成しながら出庫を待つ。
 「たくさんの雪は厄介者だが、貯蔵に使えれば農林産物に付加価値が付くと考えた」と、雪室の管理運営組合長梅津賢一さん(60)。各地の事例を参考に、県内初の雪室として町が2014年4月に開設した。
 鉄筋コンクリート2階の建物の吹き抜け部分に、ダンプカー100台分の1000立方メートルが入る貯雪庫を設置。構造が違う二つの貯蔵庫がある珍しい雪室で、2階は送風機で冷気を循環させる。室温調節ができて現在は10度、湿度約60%に設定し、コメやソバといった穀物を保管している。

<価格倍に>
 冷気が直接流れる1階は自然の対流で室温2度、湿度90%前後に保ち、野菜や果物などを貯蔵している。
 夏の暑さによる劣化やカビを防ぎ、冬場でも凍らずに乾燥しないため、農林産物の鮮度を保てる。ジャガイモの発芽を抑え、通年出荷を可能にした。リンゴなどの果樹も収穫から半年後でもみずみずしさを失わない。コメは新米の品質を2、3年保つという。
 雪室は豊かな食味をも育む。町農林建設課によると、ジャガイモや根菜類は、でんぷんが糖に変わり、糖度が貯蔵前の倍以上になったものもあった。特産のソバも甘みを増した。
 果樹園や野菜栽培を手掛ける地元の農家佐藤信悦さん(69)は「ジャガイモが苦手な人に試食してもらったら、甘くておいしいと喜んでくれた。通常の倍の価格でも売れた」と手応えを感じている。

<用途拡大>
 開設から4年が過ぎ、運営組合を構成する生産者組織や農林業団体に加え、町内外の農家ら55人が利用する(昨年12月20日現在)。
 長期貯蔵した農産物は「雪室仕込み」と銘打ち、ステッカーやシールを貼って売り出している。
 「最初は利用者がなかなか集まらず赤字だった。地道に取り組みを続け、雪室ならではのおいしい農産物を知ってもらいたい」と梅津さん。ドリップコーヒーや焼き栗など用途は広がる。隣接する直売所「旬の市七ケ宿」は、雪室貯蔵の甘いジャガイモを生かしたグルメ開発に取り組む。
 ハンディを逆手に取ったブランド戦略が、県内最少人口1400の豪雪の町を盛り上げつつある。(白石支局・村上俊)

[七ケ宿町農林産物保管庫「雪室」]総事業費約1億3700万円で年間管理費は約30万円。延べ床面積約360平方メートル。町内外から利用が可能で、料金はコメ1袋(30キロ)当たり4〜10月で1日2円(町外4円)、11月〜翌3月で1日1円(同2円)など。七ケ宿町滝ノ上18の1。連絡先は町森林組合内の事務局0224(37)2314。


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2019年01月04日金曜日


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