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<再生に挑む>自動車関連にシフト プラ成型に磨き、販路開拓/ゆわて吉田工業(岩手県大船渡市)

積極的に受け入れる工場見学で、自社製品について説明する従業員(左)

 21年を費やして築き上げた工場と取引先を、東日本大震災で一瞬にして失った。従業員1人も犠牲となり、平野工(たくみ)・工場長(45)は「再生は無理だと思った」と当時の心境を打ち明ける。

<市場変化に対応>
 プラスチック成型の「ゆわて吉田工業」は、創業当時の水産加工品容器製造から携帯電話の外装部品製造に受注の主軸を転換。成型段階で色付けもできる特殊技術で売り上げを伸ばし、震災前には国内メーカーの携帯電話で6割のシェアを誇っていた。
 震災発生から約1年半後の2012年8月、内陸部の高台に工場を再建したが、いったん解雇した従業員は戻らず、震災前の160人から120人に減った。
 空白の1年半で取引先を失ったのに加え、市場も激変。携帯電話に取って代わってスマートフォンが市場を席巻していた。
 事態を打開しようと着目したのがカーナビのパネルだった。自動車関連産業への参入には高度な品質管理が要求される。ルールを徹底的に学び、数年がかりで車載メーカーとの契約にこぎ着けた。平野工場長は「自動車の内装部品にも販路を広げたい」と話す。
 東京の親会社とは別に自前の営業部門を新設。懸命の販路開拓で、デジタルカメラの外装部品など新たな契約を獲得している。

<人材を積極登用>
 徐々に取引が広がる一方、相変わらずの人手不足が再生への足かせだ。
 現在の従業員は100人で、工場再開直後より少なくなった。工場の平均稼働率は4割にとどまらざるを得ず、売上高は震災前の水準に届いていない。
 正社員への登用制度設立、育児や介護による休暇取得推奨と雇用環境の充実に取り組み、昨年3月には、若者の雇用管理が優良な企業として厚生労働省から「ユースエール」に認定された。
 求人活動も強化し、今年春は高卒の新規採用5人が入社する。子どもたちの職場見学受け入れや学校への出前授業など将来を見据えたPRにも積極的だ。生産や労務の高度な管理ノウハウを学ぼうと、視察に訪れる水産加工業者もいる。
 「地域産業の底上げに貢献したい」と平野工場長。ものづくり企業の少ない岩手県沿岸部で復興を担う役割の重さをかみしめている。(大船渡支局・坂井直人)


2019年01月08日火曜日


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