宮城のニュース

<私の元年>新時代に誓う(6)伝統野菜 価値高める

栽培を継承してきた畑で上伊場野里芋を手にする翔太さん。「伝統野菜を守ることが地域貢献につながる」と信じる

 新しい時代が春に始まる。少し特別な年明けに、きりりとした気持ちで飛躍を誓う人たちがいる。大舞台への挑戦、古里の再生、祖国との橋渡し。思い思いの夢を目指してスタートラインに立つ。

◎サトイモ生産者 福田翔太さん(32)=宮城県大崎市三本木=

 蒸すと香り高く、煮るとねっとりした食感の中に、さわやかな風味が残る。
 大崎市三本木の上伊場野地区で栽培が続けられてきた在来種のサトイモ「上伊場野里芋」。生産量が限られ、他の地域で栽培しても同じように育たないことから「幻のサトイモ」と呼ばれる。その生産と継承に、福田翔太さん(32)は夢を懸ける。

 兼業農家の長男として生まれたが「定年で家に戻ったらやるのかな」ぐらいの感覚で、農業への関心はあまりなかった。
 地元の三本木中から宮城農高に進学。元高校球児で、卒業後は黒川郡の工場で働いた。「好きなスキーができる生活がしたい」と22歳から、富山県などのホテルで、住み込みで働く生活を送った。そこで妻となる美由希さん(34)と出会い、5年前にUターン。もうすぐ1歳になる長女美來(みくり)ちゃんが加わり、実家では今、4世代7人が暮らす。
 水道工事会社で働きながら、農業を手伝うようになった。ちまたで話題になっていた伝統野菜が、身近にあった。「昔から当たり前のようにあったが、よそではできない本当の宝だ」。そう気付くと、栽培にのめり込んだ。

 上伊場野里芋の栽培は200年以上続くと伝わる。翔太さんの曽祖父、故内蔵人(くらんど)さんは旧満州で終戦を迎え、シベリアで抑留生活を送った。そんな苦境の中でも、家族で栽培を継承してきた。
 サトイモ栽培の師匠でもある祖父富雄さん(82)は「やる気が一番。俺より素質があるし、栽培仲間を増やしたいと思っている」と若き継承者に期待する。
 専用のラベルも作り、地元の道の駅ではすぐに売り切れるほどの人気だが、ブランド力をより高めたいと願う。市外の販売会で知名度不足を実感したからだ。
 「価値を認めてもらえるように自ら発信し、産地にも足を運んで買ってもらいたい」と翔太さん。自ら栽培面積を広げつつ、若い後継者仲間を増やすことで、産地の力を上げたいと考える。
 夢がある。自慢のサトイモと音楽を楽しんでもらう「芋煮フェス」を地元で開催すること。「いつか必ず」と新春に誓った。(大崎総局・大場隆由)

[メ モ]上伊場野里芋は「伊場野芋」と呼ばれてきた。やや小ぶりで、茎が赤紫色なのが特徴。上伊場野地区での栽培農家は7軒。福田さんの家では昨年、15アールに作付けし、1.2トンを収穫した。収穫作業は10月下旬から1カ月ほどで、種芋は土中で保管する。


関連ページ: 宮城 社会

2019年01月08日火曜日


先頭に戻る