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<いわてを考える>第1部・新総合計画(1)ILC誘致 成否次第で見直し論も

自民党本部を訪れて要望書を提出する東北ILC推進協議会のメンバー=2018年12月21日、東京

 東日本大震災で傷ついた県土の復旧、なりわいの再生に取り組んできた岩手県は2019年、ターニングポイントを迎える。8カ年に及んだ復興計画が終了し、新たな総合計画がスタート。県政のかじ取り役を決める知事選が行われる。まずは新総合計画(19〜28年度)から岩手の今を考える。

<言行一致せず>
 政府が新年度予算を閣議決定した18年12月21日、東京・永田町の自民党本部に達増拓也岩手県知事が入っていった。
 応対したのは加藤勝信党総務会長。岩手、宮城両県にまたがる北上山地が建設候補地の超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致実現に向け、政権党に協力を請うた。
 東北経済界はILC誘致を有力なポスト復興施策に推す。13年に候補地が北上山地に一本化されたのを受け、県は科学ILC推進室を開設、3億4000万円を費やしてPR活動や地質調査を続けてきた。
 しかし、専門家集団の日本学術会議は2日前に「誘致を支持するには至らない」とする回答を文部科学省に提出したばかりだ。不穏な雲行きに、達増知事の表情は終始硬かった。
 「安倍総理に毎日でも会ってILCへの思いを伝えたい」と熱意を口にするが、県政界にその言葉を額面通り受け取る雰囲気はない。
 反安倍政権の立場が鮮明な達増知事を自民党県議は「やる気がないのか、それとも頭を下げたくないのか。これまで何もしてこなかったじゃないか」と冷ややかに眺める。
 言行が一致しないILC誘致。その傾向は県の最上位計画となる新総合計画にも見て取れた。
 「物質的な豊かさ」の追求とは一線を画し、「経済的な尺度では測ることができない心の豊かさ」の追求を理念に打ち出した新総合計画は、素案発表の段階から物議を醸した。

<事業当て込む>
 それでも県は「過去10年で解決できなかった社会の諸問題を岩手の地で解決するためには発想の転換が必要」と理解を求める。
 半面、重点政策の筆頭には「ILCプロジェクト」を据えた。建設費だけでも5152億〜5830億円という超巨大事業を当てにして地域の活性化を図ろうという発想だ。
 県職員時代に総合政策室長の経験もある勝部修・一関市長は「ILC誘致について総合計画に一言も言及がないのでは収まらない」と地元の声を代弁する。
 「国際プロジェクトだから物事の決まり方が読めない面もあるが、誘致が正式に決まった場合に総合計画の中にどう位置付けるか、今から考えなければ駄目だ」と注文を付けた。
 県推進協議会の試算によると、ILCの経済波及効果は20年間で5兆7190億円。一関選挙区選出の飯沢匡(ただし)県議は「誘致決定となれば、総合計画なんて吹っ飛ぶ。計画全体を変更せざるを得ないのではないか」と県当局をけん制する。
 新総合計画は2月定例県議会の議決を得て正式に決定する見通しだ。一方で政府によるILC誘致の是非判断は3月7日まで。日程が絡み合う。
 誘致が決まれば、県政運営の中核にILCを位置付けるよう求める声が高まるのは必至だ。断念となれば、県政の最上位計画に架空の事業が掲げられる事態となる。どちらに転んでも新総合計画は、出だしから見直しを迫られる。


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2019年01月08日火曜日


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