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<いわてを考える>第1部・新総合計画(2)幸福度指標 不可解な項目 物議醸す

県当局と議員が「幸福」論争を展開した県議会特別委員会=2018年12月12日

 東日本大震災で傷ついた県土の復旧、なりわいの再生に取り組んできた岩手県は2019年、ターニングポイントを迎える。8カ年に及んだ復興計画が終了し、新たな総合計画がスタート。県政のかじ取り役を決める知事選が行われる。まずは新総合計画(19〜28年度)から岩手の今を考える。

 「幸福量の指標化は研究段階と伺っているところであり、客観的に評価することについて難しさもある」
 2007年の6月定例岩手県議会。県政運営に「幸福度指標」の導入を求める議員の一般質問を、達増拓也知事はこうかわした。
 あれから11年を経て、県の新総合計画(19〜28年度)は「幸福を守り育てる県政」を前面に押し出し、施策工程表の運用管理に幸福度指標の採用を決めた。
 幸福度指標は東京都荒川区が13年度に全国に先駆けて取り入れて以来、東北でも15年度に滝沢市が導入。山形県西川町も策定を進めている。

<論争8時間も>
 岩手県は10分野65項目を設定。政策推進室は「施策の進展具合を読み取ったり全国と比較したりできるよう、毎年、データの収集が可能な項目を選んだ」と説明する。
 「健康寿命」や「余暇時間」「待機児童数」に交じって「第三セクター鉄道・バスの年間利用回数」「スマートフォンの普及率」など「幸福」との関連が分かりにくい指標もある。
 当局から一覧を提示され、議会がざわついた。
 「共働き世帯の男性の家事時間割合」は「性的少数者への配慮を欠いている」。「不登校の児童生徒数」は「現状と目標が同数値で、これでは幸福度が向上しない」。
 新総合計画を審議した昨年12月の県議会特別委員会で「幸福」論争は延々8時間に及び、当局は指標選定の理由や数値目標の根拠の説明に追われた。
 「学力が全国平均以上の児童生徒の割合」は「学力競争の激化を招く。これで子どもたちは幸せになれるのか」。議会の突き上げに最後は達増知事も「(県の将来像に)逆行するような指標の設定は好ましくない」と見直しの可能性に言及せざるを得なかった。

<比較して計測>
 議会と当局の論争を突き詰めれば「行政が個人の幸福を定義付けることの是非」に行き着く。
 幸福の在り方を研究する慶応大大学院の前野隆司教授(システムデザイン学)は「夢を持っている人、前向きな人は幸福を実感しやすいなど幸福はある程度定義化できる」と解説。
 その上で「主観的な幸福実感との比較ができるのであれば、客観的な指標の導入は有意義だ」と語る。
 県も、県民の主観的幸福度に関するアンケートを毎年実施し、客観指標と照らし合わせて幸福度を計測する方針だ。県幹部は「アンケートと客観指標に差がある場合、指標の見直しも考える」と柔軟な対応を強調する。
 県は個別事業にも総合計画を踏まえた指標と数値目標を設定する予定だ。現場の各課が上げた提案は現時点で429件に上る。
 「学校の状況に応じた進路目標を達成した高校の割合」「講演会で岩手に関係の深い題材を取り上げた回数」など、ここにも意味不明だったり不可解だったりする指標が多数紛れ込んでいた。
 指標の運用が始まる新年度まで3カ月。県民への浸透を図る以前に、県組織の意思統一は間に合うのか。


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2019年01月09日水曜日


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