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<いわてを考える>第1部・新総合計画(3)ポスト復興 経済足踏み反映疑問符

中学生が復興後の岩手について学んだ「希望塾」=2018年11月24日、岩手県山田町

 東日本大震災で傷ついた県土の復旧、なりわいの再生に取り組んできた岩手県は2019年、ターニングポイントを迎える。8カ年に及んだ復興計画が終了し、新たな総合計画がスタート。県政のかじ取り役を決める知事選が行われる。まずは新総合計画(19〜28年度)から岩手の今を考える。

 東日本大震災で中心市街地が壊滅した岩手県山田町に昨年11月24日、県内の中学生131人が集まった。達増拓也知事が塾長を務める「いわて希望塾」だ。
 「復興した後の岩手はどうなっていますか」。子どもたちの質問に達増知事は「震災前よりも安全で生活しやすく、経済活動も活発になる。震災前よりも地域を良くする」と力説した。

<事業再開84%>
 県は2011年8月に復興計画を策定。県が主導的役割を果たした災害公営住宅整備は5470戸(93.4%)が完成し、被災事業所は83.9%が事業再開にこぎ着けた。
 震災特需に沸く沿岸地域は、平均所得が震災前より増えた。長らく県央、県南、沿岸、県北の順だった県民1人当たりの所得は14年度以降、沿岸が県南を上回っている。
 三陸沿岸道は県内213キロのうち100キロが開通。復興支援道路は花巻−釜石間が本年度中、盛岡−宮古間が20年度中にそれぞれ開通する見込みだ。
 「ご静聴、ありがとうございました」。達増知事は子どもたちに向かって律義に一礼し、講話を締めくくった。
 県の新総合計画(19〜28年度)は、本年度で終了する復興計画を吸収する形でポスト復興を盛り込んだ。県の復興施策を検証する復興委員会にも中間案が示された。
 「私たちの幸福はたくさんのしかばねの上にある。明るい希望に満ちた部分だけを取り上げるのは違う」
 委員会の席上、委員の野田武則釜石市長は県執行部に痛烈な物言いを付けた。
 総合計画は震災復興を県政の最重要課題としているが、掲げられた施策はどれも既存事業の期間延長ばかりだ。それでも「多様な交流の活発化による創造的な地域」の実現を目指すという。

<並ぶ美辞麗句>
 「被災地と内陸では『幸福』の受け止め方一つ取っても違う。美辞麗句を並べられて『はい分かった』とはならない。課題にも光を当ててほしい」。野田市長は地に足の着いた復興を県に求めた。
 実際、復興の現場には陰りの兆しが見て取れる。
 18年の「いわて復興ウオッチャー調査」は、2回連続で地域経済の回復実感度が減少した。「海産物の不漁で経済的に足踏みしている」「復旧工事の終了で活気が薄れた」といった回答が数多くあった。
 11月には「タイサン」ブランドで知られる大船渡市の水産加工大手「太洋産業」が49億4500万円の負債を抱えて倒産。国の補助金17億円で新築した工場だけが残った。
 釜石選挙区選出の岩崎友一県議は「復興事業が終われば建設業を中心に所得が下がるのは目に見えている」と警鐘を鳴らす。
 県には、17年度までに交付金だけで8400億円超という国の復興予算が投入されている。特需が終わり「外資」が途絶えた後、被災地はどうなるのか。
 新総合計画は「物質的な豊かさ」と決別し「心の豊かさ」を育もう、と呼び掛けるのだが…。


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2019年01月10日木曜日


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