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<東日本大震災 復興人>「黒子役」に生きがい 人つなぎ地域支える

住民の話に耳を傾ける高橋さん(中央)=昨年12月中旬、石巻市湊町の災害公営住宅の集会所

◎石巻市・地域福祉コーディネーター 高橋泰さん(48)

 「年がいもなくかぶり物してますねえ。似合うじゃないですか」
 石巻市湊町にある災害公営住宅の集会所で昨年暮れにあったクリスマス会で、高橋泰(ゆたか)さん(48)が住民約20人の輪に溶け込み、笑いを誘っていた。
 高橋さんは市社会福祉協議会の地域福祉コーディネーターを務める。東日本大震災を機に、市社協が2013年度新設したポストだ。
 「コミュニティー・ソーシャル・ワーカー(CSW)」とも呼ばれ、地域再生の後押しや被災者・生活困窮者らの自立支援を担う。石巻では高橋さんら13人が活動している。
 「知らない人同士だから何とかコミュニケーションを取りたい」。16年11月に入居した稲井範子さん(79)が高橋さんに相談し、地域住民も交えた茶話会やバーベキュー大会を開いた。

 稲井さんは「高橋さんのおかげで顔なじみが増えた。何かあればすぐ相談できる」と感謝する。
 高橋さんは石巻市出身。震災前は地元の食品加工会社に勤め、仕入れなどを担当していた。
 あの日、上司とともに門脇小に避難。「上の方へ上がってくれ」という声を聞き、屋上に着くと眼下は地獄絵図だった。津波で車や家が流され、炎が上がっていた。
 家族の妻と義母、長男長女は無事だった。同市水明北にあった2階建ての自宅は1階が浸水し、2階での生活が続いた。
 被災した会社から震災直後に解雇され、一時は主夫業に専念した。子どもと過ごす時間が増えた一方、将来への不安は消えなかった。
 「この子たちが大きくなった時、石巻はいい街になっているだろうか。偶然、津波から逃れた意味は何だろうか」
 市社協が仮設住宅の訪問支援員を募集する新聞記事を見つけ、即座に応募。11年9月に働き始めた。
 仮設入居者間の交流を図る茶話会などの開催に奔走。多くの被災者やボランティアと出会い、「人と人をつなぐ魅力」に手応えをつかんだ。

 地域福祉を担う覚悟を決め12年4月、東北福祉大通信教育部に入学。市社協に勤める傍ら勉強に励み、17年2月に社会福祉士に合格した。
 「あの認知症の人は迷惑だ」「あいさつがない」「ごみの捨て方が違う」。高橋さんの耳には、震災で薄れた人間関係が招く不安が次々に届く。
 「暮らしやすさは近くにスーパーマーケットや病院があることではない。近くに友人や仲間がいることだ」。目指す復興の姿を描きつつ、地域回りを続ける。
 「福祉に100点はない。難しいが、面白さもある」と高橋さん。地域を下支えする黒子役に生きがいを感じている。
(報道部・片桐大介)

<描く未来図>世代間交流後押し

 高齢化や核家族化が進み、地域づくりの担い手が乏しい点は、災害公営住宅も震災前からの住宅地も同じだ。子ども好きな高齢者は多く、世代間の交流ができる場があれば地域は活性化できると思う。その一環で「子ども食堂」も支援している。おせっかいかもしれないが、住民同士が助け合い、主役となる地域づくりを支えていきたい。


2019年01月13日日曜日


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