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<つながる 気仙沼大島大橋>(4完)不安/防犯や観光 課題山積

急ピッチで工事が進む観光拠点の予定地。受け入れ態勢は未整備のままだ

 宮城県気仙沼市の離島・大島と本土を結ぶ気仙沼大島大橋(356メートル)が4月7日に開通する。東日本大震災からの復興の象徴とされる橋の開通は地元の長年にわたる悲願であり、島の生活は大きく改善する。一方、観光面の受け入れ態勢の整備や島内の防犯対策など課題も残る。架橋実現までの歴史を振り返りながら、住民の期待や不安を探る。(気仙沼総局・大橋大介)

<「バス増便を」>
 気仙沼市の離島・大島で1人暮らしをするパートの女性(70)は、買い物と通院のため月に5回以上は本土に渡る。朝に島を出て、午後には帰宅。その間、家に鍵をかけることはない。
 築33年になる家の鍵穴は、最近使っていないためさびて回りにくい。「近くに駐在所があるし、盗まれたことは一度もないから」と気にした様子はない。
 女性のように、家の鍵をかけずに外出する島民は珍しくない。島の人間関係が濃密で、不審者が入りにくい環境が警戒心を薄める。
 「家を留守にするときは、必ず鍵をかけましょう!」。気仙沼大島大橋の開通に向け気仙沼署は昨年12月、島民向けの交通安全・防犯の手引を作成した。A4判、11ページの冊子には分かりやすい防犯や交通安全の用語がずらりと並ぶ。
 同署地域課は「犯罪者が車で来たら根こそぎ盗まれてしまう環境。開通までに改善したい」と警戒する。
 長年の悲願だった橋ができ、島民の生活は大きく改善する一方、環境の変化がもたらす課題は多い。65歳以上の高齢者が5割以上も占める島で、交通弱者への対策もその一つ。
 昨年10月に島内であった橋開通に伴うバス路線再編の説明会には市の予想を上回る100人が参加し、新しい交通体制への関心の高さをうかがわせた。
 開通後、大島汽船(気仙沼市)は1日16往復ある定期船を廃止する。市は民間のバス業者に委託して島と本土を結ぶ路線バスを通すが、本数は船の半分の8往復にとどまる。
 説明会では「運転免許がない住民への配慮が足りない」「もっとバスの便数を増やして」などの声が挙がったが、市は「大半の島民は自家用車を利用することになる」と譲らなかった。
 市が全島民を対象に昨年9月実施した交通に関するアンケートによると、自家用車がない世帯は約1割。免許返納を検討している高齢者もいる。島に住む女性(76)は「足の確保を心配している住民は多い。『橋が架かって不便になった』という声が上がる可能性もある」と指摘する。

<非日常性失う>
 震災前、商店や飲食店があってにぎわった浦の浜地区。気仙沼市が整備する観光拠点の予定地では今、かさ上げされた土地の周辺を重機が慌ただしく動く。橋の開通から8カ月遅れの12月オープンに向けて急ピッチで工事が進んでいる。
 ピーク時に12万6000人が利用し、島の観光の核だった亀山のリフトは震災で被災。市はゴンドラでの復旧を模索したが、約10億円の建設費が捻出できず計画は宙に浮いたままだ。
 開通直後に1日当たりの交通量が1万台を超える試算もあるが「観光の目玉がない。受け入れ態勢は不十分」(市の観光関係者)との声は強い。期待の観光面でも不安材料は山積する。
 大島観光協会の白幡昇一会長(67)は「橋がつながって半島化すれば、島が持つ非日常性という観光資源は無くなる。危機感の方が強い」と話す。
 4月7日の開通日まで、3カ月を切った。


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2019年01月13日日曜日


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