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<私の元年>新時代に誓う(10)/伝統守り命吹き込む

こけしに絵付けする松田さん。「興味がなかった人を振り向かせたい」と語る

◎鳴子こけし工人 松田大弘さん(28)=大崎市鳴子温泉=

 体をくの字に曲げ、迷いなく筆を走らせると、白木の人形に優しい微笑が浮かび上がった。大崎市鳴子温泉の松田工房。4代目の松田大弘(ともひろ)さん(28)がこけしに命を吹き込んでいた。
 最低3年は下積み、10年やって一人前。そんな伝統工芸の世界で、めきめきと頭角を現した。本格的に制作を始めた2017年、初出展したみちのくこけしまつり(山形市)で入選。18年は地元で開催される全国こけし祭りで、3位の林野庁長官賞に輝いた。

 こけし研究家の高橋五郎さん(75)=仙台市青葉区=は「伝統を継ぎながら、まねに終わらず、自分なりの新しい感覚を盛り込んだ」と舌を巻く。カメイ美術館(青葉区)の青野由美子学芸員(49)は「本質を捉えるセンスがある。今後も目が離せない」と期待する。
 入門までは曲折をたどった。5歳で始めたピアノに熱中し、プロを目指して音大に進学。毎日10時間以上の練習を重ねたが「才能のかけらもなかった。実らない努力があると思い知った」。
 約2年間の介護職を経て、進んだ大学院で転機が訪れる。「地域発展論を勉強してて、自分は? とふと考えた。郷土に一切貢献していないことに気が付いた」。修士論文を書く傍ら、父忠雄さん(62)に木地ひきを一から学び始めた。
 戦前と高度経済成長期に続く第3次こけしブームといわれる近年。「こけし女子」と呼ばれる若い女性の愛好家が増え、自由なデザインの創作こけしが人気を集める傾向にある。

 大弘さんはあえて今、昔ながらの伝統こけしに力を注ぐ。「売れるから作るという考えに流されないようにしたい。まだまだ修業の身だし、まずは自分が作りたいものを追い求めたい」。創作こけしを作る際も、伝統の手法にのっとるというルールを自らに課す。
 東北の歴史、風土に育まれてきたこけしの魅力に、より多くの人に気付いてもらうのが夢。「僕のこけしを求めて、わざわざ訪ねてもらえるぐらいになれたら、少しは鳴子の役に立てる」。ショパンを奏でた細くしなやかな手はもう、ごつごつと硬くなっている。(加美支局・佐藤理史)

[メ モ]こけしは19世紀初頭、わんや盆をひいていた木地屋が湯治客に売ったのが始まりとされる。産地は東北6県に広がり、11系統に分類されることが多い。全日本こけしコンクール(白石市)、全国こけし祭り、みちのくこけしまつりが3大コンクールと呼ばれる。


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2019年01月13日日曜日


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