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<成人式>命の重み 刻み前へ 看護師を目指す田中さん/大船渡

松原君の遺影を携えて式に臨む田中さん

 岩手医大看護学部2年の田中彩絵美(さえみ)さん(20)=岩手県矢巾町=は、東日本大震災で犠牲になった幼なじみ松原啓太君=当時(12)=の遺影とともに古里の大船渡市であった成人式に臨んだ。震災当時は小学6年。市内の小中学生で唯一、震災で犠牲になった。
 同じ保育園と小学校に通った大親友。「啓太君はきっと、じっと話を聞いたりしないよね」と遺影を膝の上にしっかり置いた。一緒に式に出るのだからと写真の中の啓太君には、画像を加工してスーツを着せた。
 式では出席者全員が震災犠牲者に黙とうをささげた。「みんなが啓太君を思ってるよ」。胸にあの日の啓太君が去来した。
 大船渡北小6年だった2011年3月11日。避難した校庭で余震におびえる友達を、ひょうきん者でムードメーカーの啓太君は「自分も揺れれば怖くないよ」と言って励ましていた。それなのに…。
 迎えに来た家族の車で帰宅する途中、啓太君は津波にのまれた。
 小学校の卒業式に啓太君がくれたパーカを着て出席した。寂しくて一人で泣いた夜、パーカに身を包むと心が安らいだ。
 「つらいと言ってもどうにもならない」。そう思う一方で、引き留められなかったことへの後悔を抱え続けた。
 高校生の時、先輩のある言葉を知った。「私たちの大事なものを奪ったのは海だけど、それでもやっぱり海が好き」。少しずつ、心が前向きになれた。
 二十歳になった田中さんは今、母親と同じ看護師を目指して勉学に励んでいる。死と向き合うのはまだ怖い。でも震災を経て、命の重みや周囲を思いやる大切さに気付いた。人を温かく包み込む啓太君のようになりたい。
 「ありがとう。啓太君の分まで一生懸命生きるよ」。写真の中の大親友に誓った。


2019年01月14日月曜日


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