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<ニュース深掘り>障害者雇用水増し・山形県の対策 共生へ職場環境改善を

障害者雇用水増し問題で職員61人の処分を発表し、謝罪する大森康宏総務部長(中央)ら=2018年12月3日、山形県庁

 全国最悪となった山形県知事部局の障害者雇用水増し問題で、県は今年中の法定雇用率(2.5%)達成に向けた対策を打ち出した。採用試験の追加実施や障害者を対象とした職場実習導入が柱となるが、就労支援の現場では「障害者への理解不足が根本的な原因。民間企業の方が先を行っている」との声が強い。県庁は共生社会にふさわしい職場に変われるのか。改革への覚悟が問われている。

 昨年12月26日、水増し問題の原因や経緯を明らかにするため県が設置した検証委員会の会合。委員の一人で、発達障害の調査研究に取り組むFR教育臨床研究所(天童市)の花輪敏男所長は「県職員はまず障害者の働く現場を視察に行くべきだ」と強く訴えた。
 他の複数の委員も「どんな障害者なら何が可能で何が不可能か。全く理解していないことが今回の問題の根本にある」などと語り、障害者雇用に対する県の理解不足を指摘した。
 この日の会合で、県は新年度、障害者向け職場実習を導入する方針を説明。「県の仕事を知ってもらうと同時に就労環境や通勤方法など配慮すべき課題の発見に役立てる」と語った。
 しかし、意識の高い民間企業では職場実習は既に常識とされる。特別支援教育や自立支援に携わる関係者の間では「県の取り組みは周回遅れだ」との声が上がる。
 知的障害がある生徒が通う上山高等養護学校(上山市)で進路指導主事を務める渡辺千佳子教諭は「職場実習なくして就職はあり得ない」と断言する。
 高等3年生の8割以上が民間企業に就職する同校では、2週間の実習を年2回行うことが前提となっており、「県がこれまで行っていなかったのが不思議なくらいだ」と首をかしげる。
 就職後の定着などに向けた支援も民間が先行している。その一つが「ジョブコーチ」だ。障害者が働く職場で必要とされる配慮やコミュニケーション、業務の円滑化などについて、障害者本人や同僚、人事担当者らに助言する。厚生労働省が2002年度に制度化した。
 国が指定する研修を受けた専門家に資格を認め、企業が自ら雇用したり、社会福祉法人に所属する資格者の派遣を求めたりしている。渡辺教諭によると、就職した上山高等養護学校卒業生の約半数も例年利用しているという。
 一連の問題を受けて県は来年度、障害者雇用充足に向け、アドバイザーを委嘱する予定。ただ、その役割は障害者が従事できる業務の選定などについて県に助言するにとどまる。
 花輪所長は「必要な人数を採用すれば解決する問題ではない。職場環境の改善と定着のために県もジョブコーチの導入を検討するべきだ」と強調する。
 県人事課によると、今年6月時点で法定雇用率を満たすために新たに雇う必要がある障害者は106.5人。県はその大部分を非常勤職員の採用で賄う方針だが、現行制度では勤続3年が上限で契約満了後の就労あっせんもない。個々の障害者のキャリアアップにつながるとは言い難い。
 県の改革は緒に就いたばかりだ。障害者が真に生きがいを感じて働ける職場づくりに向け、教育現場などの声に正面から向き合い、対話を深めていく必要がある。(山形総局・吉川ルノ)

[山形県知事部局の障害者雇用水増し問題]中央省庁の障害者雇用水増し問題が発覚した直後の2018年8月下旬、山形県は知事部局で1976年以降、障害者の不適切な算入が行われていたと発表。2017年時点の水増しは都道府県で最も多い76人。2.51%としていた雇用率は実際には1.17%で、17、18年の障害者雇用の不足数も都道府県で最多となった。県は18年12月3日、関与した職員61人を処分した。


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2019年01月14日月曜日


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