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<大槌町旧庁舎>解体認める判決、住民の思い複雑「津波が人ごとに」「残すと前に進めぬ」

18日に本体解体工事が始まる大槌町の旧役場庁舎

 東日本大震災の津波で当時の町長や職員多数が犠牲になった岩手県大槌町の旧役場庁舎存廃問題は17日、解体差し止めを求めた住民の訴えを盛岡地裁が却下して一応の決着を見た。解体の是非を巡って今なお悩み続ける町内に、落胆と安堵(あんど)が交錯した。

 震災遺構として保存を求めてきた自営業の男性(51)は「将来、津波が人ごとにならないか」と懸念する。一方で「町民の間では『もう済んだ話なのに、いつまでやっているんだ』という雰囲気が強くなっていた」と疲れをにじませた。
 旧庁舎前で仮設のそば店を営む佐々木光義(みつぎ)さん(50)は「解体と保存のどちらの立場でもないが、学生や海外の人々も見学に来ていた。残すならそれなりの価値はあると思っていた」と言う。
 解体を望んでいた会社員女性(42)は「映像など震災を伝える手段は他にもある。司法の結論ですっきりした」と語った。
 食料品店経営の八幡幸子さん(68)も「旧庁舎を見るのがつらいという人は多く、町が前に進むためには必要ない。建物で震災を伝えるのではなく、町民それぞれが語り継ぐことが大切だ」と強調した。
 昨年6月にいったん着手した解体工事は、手続き漏れや、アスベスト(石綿)調査の不備など不手際を重ねた。町職員の一人は「解体は認められたが、町民の信頼は相当失った」とつぶやき、複雑な表情を浮かべた。

<裁判そぐわぬ事案/地域防災に詳しい斎藤徳美岩手大名誉教授の話>
 そもそも裁判で黒白を付ける事案ではなかった。二度と被害を出さないための検証と対策を行った上で、旧役場庁舎がどんな役割を果たすか議論すべきだった。町民意見は今も解体と保存に二分されている。判決によって町の解体方針はお墨付きを得た形だが、このまま解体を進めてしまうと、町の復興をどうするか、次の災害に対してどう安全を確保するかを考える上で大きな禍根を残す。


2019年01月18日金曜日


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