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<大槌町旧庁舎>解体差し止め認めず 盛岡地裁、原告の請求却下

 東日本大震災の津波で当時の町長や職員多数が犠牲になった岩手県大槌町旧役場庁舎を解体する判断は違法として、住民団体「おおづちの未来と命を考える会」の高橋英悟代表らが平野公三町長に工事と公金支出の差し止めを求めた住民訴訟の判決で、盛岡地裁は17日、「訴えは住民訴訟の対象にならない」として工事差し止めの請求を却下、公金差し止めの請求を棄却した。

 平野町長は「解体について司法的に認められた」として18日の解体着手を表明。原告側は控訴について「今後、協議する」とした。
 中村恭裁判長は「住民訴訟の提起は地方公共団体の執行機関による財務会計行為に限定されている」と指摘。震災遺構について「自然災害に対する危機防災意識を醸成していく上で一定の意義を有するもの」と定義しつつ、解体は「業者が契約に基づいて行う物理的破壊行為にすぎない」と断じた。
 原告側は「町には旧庁舎の価値を調査する義務がある」と主張したが、判決は「財産の運用方法は地方公共団体の合理的な裁量に委ねられている」として「解体判断に裁量権の範囲の著しい逸脱、乱用はなかった」と退けた。
 震災遺構としての社会的、経済的価値の調査が不十分とする主張には「専門家を交えた委員会や住民説明会も行われていた」と認定。解体予算は住民代表の議会で可決されているとして「住民の意向が十分尊重された上で、解体の住民意思が表された」と結論付けた。
 2018年度一般会計で、解体費を補正予算として当初予算と一括提案した手続きの違法性も訴えたが「議決により予算として有効に成立している」と退けた。
 高橋代表らは18年6月、町監査委員に解体工事差し止めの住民監査を請求したが7月に棄却(一部却下)となり、8月に住民訴訟を起こした。

[岩手県大槌町旧役場庁舎]東日本大震災の地震発生時、大槌町は災害対策本部を駐車場に開設。避難の指示や勧告を出すことなく、2階の天井付近まで達する津波に襲われた。庁舎周辺では町長と職員の計28人が犠牲になった。当時、総務課主幹(防災担当)だった平野公三町長ら22人は屋上に逃れた。出張先から戻る途中で津波にのまれるなど、職員の犠牲は町長を含めて計39人に上る。


2019年01月18日金曜日


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