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<安住の灯 震災列島に生きる>出口見えぬ 仮住まい

寒空の下で洗濯物を取り込む吉田さん。仮設住宅は狭く、室内に物を干せるスペースはない=7日、石巻市大橋1丁目
一般的な仮設住宅の見取り図
災害からの住宅復興プロセス

 東日本大震災は岩手、宮城、福島3県で甚大な住宅被害をもたらした。2011年3月11日から7年10カ月が経過したが、住まいの再建は途上で、今なおプレハブなどの仮設暮らしを余儀なくされる被災者もいる。震災被害の大きさと仮設住宅入居者数の推移を振り返り、被災後の暮らしをサポートする災害救助法や長引く仮設暮らしの課題をまとめた。(「震災と住まい」取材班)

◎被災3県 最多27万人

 岩手、宮城、福島3県では震災の大きな揺れと津波で約12万棟が全壊、約24万棟が半壊の被害を受け、東京電力福島第1原発事故による避難も強いられた。最も多かった2012年3月には、3県で計約27万人がプレハブや民間賃貸などの仮設住宅で暮らした。
 3県沿岸部の住宅損壊と仮設住宅の状況は図の通り。主な自治体の全壊率(円グラフ)は、宮城の女川町が77.1%の住家に及び、最も高かった。南三陸町は59.9%、山元町は41.1%、石巻市は33.0%に達した。
 岩手は大槌町(56.4%)、陸前高田市(46.4%)、山田町(38.9%)など海沿いに市街地があった自治体の被害が際立つ。
 福島は岩手、宮城に比べて全壊、半壊の割合は低いが、原発事故に伴ってピーク時(12年5月)には16万4865人が県内外で避難生活を送った。避難者数は現在も4万人を超える。
 プレハブなどの応急仮設住宅は、岩手が1万3984戸、宮城が2万2095戸、福島が1万6800戸をそれぞれ整備した。宮城、福島は都市部の民間賃貸住宅などみなし仮設に入居した被災者も多かった。
 入居戸数の推移(棒グラフ)を見ると、自宅再建や災害公営住宅の整備などの遅れで、仮設暮らしは解消できていない。3県によると、18年末現在で岩手は1119戸、宮城は266戸、福島は537戸の建設型仮設が残され、8度目の冬を迎えている。

◎石巻・大橋仮設に記者が宿泊/狭い寒い 4畳半二間

 手狭な台所は物の置き場に困るほどで、4畳半の二間は窓から冷気が忍び寄る。本来、応急住宅だったはずのプレハブ仮設は、震災から8年近くたった今も各地に残されたままだ。石巻市の大橋仮設住宅に1人で暮らす吉田ヨシさん(82)宅に7日、宿泊させてもらい、仮住まいの厳しい現実に触れた。
 部屋を訪ねたのは夕暮れの午後4時ごろ。12世帯が入居できるプレハブ棟に、吉田さん以外の住人はいない。満室だった頃は壁1枚のみで隔てられた隣人を気にしていたが、今は物音一つ聞こえなくなった。
 歌が大好きという吉田さん。居間にある家庭用のカラオケ機を使い、よく1人でマイクを握るという。「大声出しても誰にも迷惑掛からねえから」と誘われ、夕食まで一緒にカラオケを楽しんだ。
 合間に正月用のあんこ餅をいただく。鍋を温めるガス台の足元には米びつや調味料が置かれ、正面に立つのが難しい。腕を目いっぱい斜め前に伸ばし、日々の煮炊きをしている。

◎カイロと猫 暖取り眠る

 午後9時、懐中電灯を手に1人で外を歩いてみた。街灯はほとんどない。かつて540世帯が軒を連ねた面影はなく、団地全体が抜け殻のようだ。市の公表資料では今も26世帯が残るとされているが、転居後も荷物を放置して鍵を返却しないケースがあり、居住実態は半分以下とみられる。
 部屋に戻ると、吉田さんが居間に来客用の布団を出してくれた。仏壇やこたつがあるため、空きスペースをつくって寝場所を確保するしかない。窓枠に座布団を3枚押し当て、すきま風の侵入を防ぐのが仮設暮らしで得た生活の知恵だ。
 就寝前に案内された風呂場にはバケツや掃除道具がひしめき、浴槽も全長90センチ、幅50センチ、深さ50センチと小さい。「湯船に漬かんねえと風邪ひくぞ」との気遣いを受け、30センチほどお湯をため、体育座りで温まった。
 風呂から上がると、吉田さんは冷蔵庫そばのベッドで使い捨てカイロと飼い猫のぬくもりで暖を取り、眠っていた。風で建物がきしむ音が寝床で聞こえる。「どれほど肩身の狭い日々を過ごしてきたのだろうか」。切ない思いが胸にこみ上げてきた。(桐生薫子)

<災害救助法>1946年の昭和南海地震を契機に、国や地方自治体が協力して被災者を救助、保護する目的で47年に制定された。一定数の住居が全半壊するなど被害の大きかった自治体に適用される。
 具体的な内容は、避難所設置や仮設住宅の提供に加え、炊き出しや食料、飲料水の供給、住宅の応急修理など11種類。「平等」「必要即応」「現物給付」などを原則とし、都道府県や市町村が運用する際の一般的な基準が定められている。
 仮設住宅は家が全壊、流失するなどした被災者が対象で、入居期間は原則2年以内。東日本大震災の時点で1戸当たりの規模は「29.7平方メートル(9坪)を標準」とし、建設費の限度額は約239万円だったが、現実には風呂の追い炊き機能や防寒工事で約617万〜730万円に膨らんだ。
 内閣府は2017年4月に基準を変更。建設費を約552万円に引き上げ、面積要件を削除した。仮設の入居対象を半壊に広げるなど柔軟な運用も図っているが、仮設暮らしが長期化し、住まい再建が停滞する被災地の実情と乖離(かいり)している。


関連ページ: 宮城 社会 安住の灯

2019年01月22日火曜日


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