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避難者の心、歌で一つに 元高校教諭が災害公営住宅で合唱サークル指導、気持ち明るく

貝瀬さん(左)の伴奏に合わせて歌うグランひまわりのメンバー

 東京電力福島第1原発事故の避難者が暮らす福島市飯坂町の災害公営住宅「飯坂団地」で月2回、入居女性らの元気な歌声が響く。同市の元音楽高校教諭貝瀬幹雄さん(75)がボランティアで合唱指導を始めて約4年。心と声を合わせた練習は、入居者らが仲間と共に生きる喜びを実感する場になっている。

 「もっと声を盛り上げて」「しっかり声を出してください」。今月22日、飯坂団地の集会所で、貝瀬さんが声を掛けた。
 集まったのは合唱サークル「グランひまわり」のメンバー。貝瀬さんの電子ピアノの伴奏に合わせ、「雪の降る街を」「いつでも夢を」など20曲を歌った。
 サークルは飯坂団地などで暮らす福島県浪江町出身者ら十数人でつくる。50〜90代のメンバーが隔週火曜午前10時に集まる。約1時間半、童謡や唱歌、懐かしい歌謡曲などを歌う。サークルに入って合唱を始めた人が大半だ。
 貝瀬さんは福島東稜高(福島市)の元教諭。避難者との出会いは2014年12月、自宅近くの仮設住宅に電子ピアノを寄贈したのがきっかけだった。弾く人がいないため、貝瀬さん自身が伴奏することを提案した。仮設での隔週の「歌う会」が始まった。
 参加者は約10人。先の見えない避難生活もあり、当初の雰囲気は重苦しく、声を出すのは2、3人程度。「『海』や『川』といった言葉が出る歌は歌いたくない。離れた古里を思い出して涙が止まらない」と言う人もいた。それが練習を重ねるたび、表情が和らいできた。
 昨年4月には、メンバーの多くが移転した飯坂団地に練習会場を移動。ピアノも移した。休憩時間には古里の浪江の話で盛り上がるなど、孤立しがちな避難者がコミュニケーションを図る場にもなっている。
 「歌うことで気持ちが明るくなった」とグランひまわり会長の山田千代子さん(72)。メンバーの豊口澄子さん(82)も「合唱でみんなの声がぴったり合う瞬間が楽しい」と話す。
 コンサートを集会所で開くのが当面の目標だ。貝瀬さんは「1人で歌うよりみんなでハーモニーを奏でる方が楽しい。音楽は人を元気にする。男性もメンバーになってもらえればいい」と混声合唱の実現にも期待する。


2019年01月25日金曜日


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