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<安住の灯>みなし仮設 沿岸の人口流出要因に

 東日本大震災では、7年10カ月が経過した今もプレハブ仮設住宅が解消できず、仮設間の転居を強いられた被災者もいる。本格的に運用が広がった民間賃貸住宅などの「みなし仮設」は、沿岸部から内陸への人口流出を加速させた。仮設暮らしが長期化する陸前高田市の状況や、仮設入居に伴う居住地移動の実態をそれぞれ継続調査する2人に研究報告の概要と、今後の課題などを聞いた。(「震災と住まい」取材班)

 国立研究開発法人建築研究所の米野史健上席研究員は、みなし仮設を退居した世帯の転居先などについて宮城(2017年5月末現在)、岩手(同4月末)両県の動向を分析した。被災した市町村を離れ、他自治体のみなし仮設に入居した世帯で、退居後に元の市町村に戻った割合は両県とも約4割にとどまった。
 宮城は仮設入居で転出した7971世帯のうち、住宅再建などで元の市町村に復帰したのは42.5%。転出先での定住は40.1%、さらに別の自治体への移転は17.4%に上った。岩手はそれぞれ39.1%、41.3%、19.6%となり、ほぼ同じ傾向を示した。
 入退居に伴う自治体間の主な転出入状況は図の通り。宮城(転出数100件以上)は他市町から仙台市への移転が集中し、戻った世帯は半数に満たない状況が生まれている。
 岩手(20件以上)も県都・盛岡市の仮設に多くの世帯が移り住んだが、沿岸部に帰る動きは弱い。仮住まいの場を求め、気仙沼市から一関市に県境を越えた世帯のうち、戻ったのは約6割にとどまっている。

[仮設住宅の種類](1)プレハブなどの簡単な応急住宅を建設する(2)公営、公団、公務員住宅などの空き家を提供する(3)アパートやマンション、一戸建てといった既存の民間賃貸住宅などを自治体が借り上げる−に分かれる。
 (3)は「みなし仮設」とも呼ばれる。家賃は月6万円を基準に、家族構成に応じて金額を補助する。空き部屋があればいち早く入居が可能。新規の工事などを伴わないため、コストの低さが利点の一つとされる。
 会計検査院はみなし仮設の2年間の1戸当たり平均経費を約183万円と算出。岩手、宮城、福島の被災3県で建設された仮設住宅に関する費用約617万〜730万円を大きく下回った。
 東日本大震災では都道府県が物件リストを提供する従来の仕組みに、被災者が探した物件を新規に借り上げる運用も加えられ、利用が広がった。最大で約14万戸あった被災者向けの仮設のうち、みなし仮設は半数近い約7万戸に達した。


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2019年01月27日日曜日


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