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<没後70年 朝河貫一の問い掛け>(下)高校生に聞く/相互理解の意義 現代に

米ダートマス大で学生らと交流する(左から)五十嵐さん、林さん、渡辺さん=昨年7月27日、米ニューハンプシャー州ハノーバー

 福島県二本松市出身で日本人初の米エール大教授となった朝河貫一(1873〜1948年)が亡くなって70年が経過した。世界的歴史学者で日米開戦回避に動いた平和主義者でもあった。ナショナリズムが台頭している現代に、朝河の業績や思想を見つめ直したい。研究者と地元関係者、次代を担う若者に聞いた。(郡山支局・岩崎かおり)

◎海外派遣で米国訪問の3人

 日本人で初めて米エール大教授となった朝河貫一の顕彰協会(福島市)は昨年夏、高校生3人を米国に派遣した。共に福島高2年の林帆夏(ほのか)さん(17)=福島市=、五十嵐由樹さん(16)=二本松市=と、あさか開成高2年の渡辺拓真さん(17)=郡山市=は「朝河が訴えた相互理解の大切さは現代に通じる」などと話す。

 <国際理解に関する中高生の論文を対象にした福島県教委主催の朝河貫一賞の受賞が派遣につながった>
 林 中学3年時の論文が最優秀賞になった。テーマは中学1年の授業で見たヘイトスピーチの動画。日本でも部落差別や性差などで傷ついている人がいる。無知が偏見や差別、固定観念を生むと訴えた。
 五十嵐 中学2年の時、最優秀に選ばれた。家族旅行でホテルから荷物を送ろうとし、住所を「福島県」と書くと、従業員の顔が一気に曇った。(東京電力福島第1原発事故に伴う)一種の差別と感じたことを作文にした。
 渡辺 高校1年時に2週間、オーストラリアに研修に行った。長崎の平和式典のためホストファミリーに折り鶴を折ってもらおうとしたが、うまく伝えられず「なぜ折り鶴が平和の象徴か」を調べた経験を書いて優秀賞となった。

<福島の現状報告>
 <朝河は最初に米ダートマス大に留学した。今回の高校生派遣でも同大を訪れて英語でスピーチした>
 五十嵐 福島の農作物の安全性を発表した。放射線量の数値をグラフで分かりやすく示した。
 渡辺 福島の自然が放射能で汚染され、観光客の宿泊キャンセルが相次いで悲しくなったと伝えた。
 林 復興とスポーツの関わりを話した。2020年東京五輪の野球・ソフトボールの試合が福島市であること、原発事故の対応拠点となったサッカー施設Jヴィレッジが再開したことを紹介した。
 <エール大にも足を運んだ。朝河の足跡をたどって見えたのは?>
 渡辺 朝河は客観的に平等に見ることを大切にしていた。特に海外では大切。人種や言語、文化をきちんと理解できる。
 林 未来というより当時の人たちのために頑張っていた。常に世界から福島や日本を考え、自分を犠牲にすることをいとわない。その生き方に感銘を受けた。
 五十嵐 日米開戦に警鐘を鳴らした。客観的な視点があったから「このままでは駄目」と日本に伝えられた。「客観的な視点を持て」「相互理解を深めろ」と私たちに教えている。

<差別ない世界を>
 <朝河の教えに触れることの意義は何か>
 林 朝河は学び知ることをおろそかにしなかった。私も、得た情報をわがことと結び付けて発信できる人になりたい。
 五十嵐 相手を知らないため「どうなってもいい」と戦争が起こる。身近な例では会員制交流サイト(SNS)の炎上がそう。大切なのは朝河が訴えた相互理解。差別のない世界をつくりたい。
 渡辺 朝河は物事を平らな目で見て分析した。私の妹は障害があり、差別的な目で見られることもあった。弱者の立場で物事を考えられる人になりたい。


関連ページ: 福島 社会

2019年01月31日木曜日


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