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<陰る原子力 アメリカリポート>巨額負債住民につけ 福島事故構図重なる

新規建設工事が中止になったVCサマー原発=2018年4月、サウスカロライナ州(High Flyer提供)

 世界最大の原子力大国・米国で原発利用が衰退局面に入っている。新型天然ガス「シェールガス」の登場で価格競争力が下がり、廃炉を表明する電力会社が相次ぐ。スリーマイル島原発(ペンシルベニア州)の事故以来、34年ぶりだった新規の原発建設は東京電力福島第1原発事故を受けて建設費や安全対策費が高騰し、建設中止や完成時期の延期を余儀なくされている。

 米国サウスカロライナ(SC)州で破綻した新規原発計画の巨額負債が住民生活に重くのしかかっている。地域独占に基づいた州政府のエネルギー政策失敗のつけを住民が負担する構図は、福島第1原発事故を防げなかった日本の政治、経済構造と重なって見える。
 「電気代で払ったお金はなくなるし、負担は続く。政府、電力会社による詐欺のような話だ」。州都のコロンビアで、昨年11月1日に開かれた公共政策公聴会を傍聴した住民のレスリー・ミナードさん(55)が怒りをぶちまけた。
 スリーマイル島原発事故後、34年ぶりの新規建設だったSC州のVCサマー原発2、3号機の工事は2017年7月、請負会社のウエスチングハウスの破産を受けて中止になった。進捗(しんちょく)率40%で、当初予定の総工事費90億ドルを使い切っていた。
 世界的に原発工事費が高騰する中、新規着工を可能にしたのは住民の電気代だ。SC州政府は原発を建設するため07年、住民の電気代から事前に費用を徴収する法律を施行した。
 制度導入当初、1000キロワット時当たり109ドルだった電気代は工事費の増加と遅れに合わせ9年間で9度値上がりした。最終的に電気代は148ドル、負担率は18%にまで跳ね上がった。
 住民が支払った20億ドルは既に、事業者の資金繰りに消えた。さらに住民は今後20年間、完成にすら至らない原発の建設費用の一部を負担し続ける。
 「問題の構図は、福島の事故の背景と同じだ」。市民団体「フレンズ・オブ・アース」のトム・クレメンツさんが説明する。
 福島第1原発事故前の日本のように、SC州は電力会社の地域独占が認められている。SC州の場合、政府が法を制定しただけでなく、共同事業者に政府系企業が入っていた。そうした事情もあってか、内部から工事見積もりの甘さを指摘する声が再三上がっていたにもかかわらず、顧みられなかった。
 クレメンツさんは「事業者、政治家、規制当局の誰も責任を取らず、負担だけが住民に回ってきている。あまりにもばかげていて悲劇というより喜劇のようだ」と話した。


2019年02月01日金曜日


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