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<陰る原子力 アメリカリポート>(上)墓石/税収減より「幸せ」守る

廃炉後の原発敷地に残る使用済み核燃料を入れたキャスク=メーン州ウィスカセット(メーンヤンキー原発提供)
使用済み核燃料と送電設備を残し、緑地が広がる廃炉後の原発敷地=メーン州ウィスカセット

 日本の原子力産業をリードしてきた米国で原子力発電が斜陽産業と化している。東北も東北電力女川原発1号機(宮城県女川町、石巻市)の廃炉が決まり、廃炉時代が迫る。ハーバード大客員研究員として、先進地アメリカで立地地域の事情を探った。(むつ支局・勅使河原奨治)
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<97年廃炉決定>
 緑地に変わった原発跡地に使用済み核燃料が墓石のように直立していた。
 カナダ国境に近い米国北東部メーン州のメーンヤンキー原発は重要配管でひび割れが見つかり、免許期間11年を残したまま1997年に廃炉が決まった。全米3番目の廃炉原発で、2005年に解体を終えた。
 有刺鉄線で囲まれた敷地に自然が戻り、高圧電流を送っていた電線にタカ科の鳥オスプレイが巣を作る。シカの親子が草をはむ。
 コンクリートに覆われた使用済み核燃料入りの金属製容器(キャスク)64体の現場保管が、最終処分場が決まるまで続く。
 「燃料運び出しが終われば会社は消滅する。しかし、時期や場所は決まっていない」と同原発のエリック・ハウズ広報担当が語る。
 約600人いた社員は10人ほどになった。最終処分場を準備できなかった米国政府から賠償金を受け取り、年間約1000万ドル(約10億9000万円)で保守、管理に当たる。

<安心感を重視>
 立地するウィスカセット町は入り江に面した人口約3700の観光地だ。東海岸一と言われるロブスターロールの店を中心に約10軒の店がダウンタウンをつくる。
 町で30年以上、美術品店を営むケイス・オーミッグさん(56)は「税金は高くなったけど安心して暮らせる分、原発があった頃より幸せだよ」と現状を受け入れる。
 3年前にモンタナ州から夫と移住してホテルを経営するサンドラ・ネパードさん(48)は「原発があったら違う場所に行っていた」と税金以上に安心感を重視する。

<「特効薬ない」>
 原発からの固定資産税は町の総税収の90%に当たる年間約1200万ドルから、廃炉後は年間100万ドルに激減した。稼働を前提に整備した警察、消防、学校は廃炉後、縮小を余儀なくされた。平均的な住民の税金は数百ドルから1000ドルを超すようになった。
 町の行政を仕切るタウンマネジャーのマリアン・アンダーソンさん(60)は「税収減の特効薬はない。違う方法でチャレンジする。原発がなくても私たちが生きているというのが大きなメッセージ」と語る。
 東京電力福島第1原発事故で地域が失った「幸せ」が、原発をやめた地域が守った「幸せ」の大きさと同じと考えるアンダーソンさん。「たとえ税収が増えるとしても、新たな原子力施設はコミュニティーが受け入れない」と断言した。


2019年02月01日金曜日


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