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<陰る原子力 アメリカリポート>(下)終末/トラブル頻発 赤字拡大

5月末に廃炉になるピルグリム原発の前に立つメアリーさん=2018年10月、マサチューセッツ州プリマス

 日本の原子力産業をリードしてきた米国で原子力発電が斜陽産業と化している。東北も東北電力女川原発1号機(宮城県女川町、石巻市)の廃炉が決まり、廃炉時代が迫る。ハーバード大客員研究員として、先進地アメリカで立地地域の事情を探った。(むつ支局・勅使河原奨治)

<「一番危ない」>
 廃炉を間近に控えた原発が、まるで老骨にむち打つかのように稼働していた。
 1620年にメイフラワー号が到着し「アメリカの故郷」とも言われるマサチューセッツ州プリマス地区にあるピルグリム原発は、今年5月末で廃炉になる。
 「今が一番危ない状態。取り壊すのが分かっている家を誰も修復しないように、安全対策がないがしろになりやすい状況だ」
 監視を続けてきた市民団体代表のメアリー・ランパートさん(76)は危機感を募らせる。
 ピルグリム原発は、東京電力福島第1原発と同じゼネラル・エレクトリック(GE)社のマークI型で出力68万キロワット。約600人が働く。1972年に営業運転を始め、2012年に20年間の運転延長が認められた。

<雪で緊急停止>
 老朽原発は13年に吹雪による停電で緊急停止、15年にも大雪で止まった。米原子力規制委員会は原発の健全性評価で、ピルグリム原発を全米で最低のレベル4に分類した。強制閉鎖になるレベル5の一歩手前だ。
 事業者のエンタジー社は15年10月、再生可能エネルギーや天然ガス火力が優位の市場環境、運営維持費の高騰を理由に免許期間を残しての廃炉を発表した。
 営業を続ければ続けるだけ赤字が膨らむ。昨年は原子炉に給水する弁のトラブルが頻発した。年に4度、計61日間にわたり原子炉を停止し、赤字幅を広げた。

<大災害を懸念>
 「原発が廃炉になろうが、大した問題じゃないね。原発があることを知らない人も多いよ」。プリマス地区中心部に住むラリー・アンセロさん(71)は、廃炉を全く意に介さない。
 この街で10人近くに話を聞いても、返ってくるのは「問題ない」「分からない」「気にしない」との答えばかり。安全面でも経済面でも気にする人は少ない。
 プリマス商工会のエイミー・ネイプルス事務局長は「失業者が約200人出て税収には響くだろうが、地域経済への影響はそれほど大きくはない」と話す。
 廃炉で地区の税収は現在の850万ドル(約9億2600万円)から大幅に下がる見込みだ。地域は研究会を設置するなどして影響を分析し、対策を練ってきた。
 プリマス地区のタウンマネジャーを務めるメリッサ・アーレギーさん(50)は「廃炉による地域経済への影響より、大災害が起きないかと心配している。次は原発以外の高度な知識を必要とする産業を誘致したい」と語った。


2019年02月03日日曜日


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