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そば一筋の人生に悔いなし 震災も耐えた宮城・南三陸「大朝日」30年超の歴史に幕

店で調理する菅原さん(左)と末子さん。長く守ったのれんを下ろす

 宮城県南三陸町志津川のそば店「大朝日」が5日の営業を最後に、30年以上掲げたのれんを下ろす。東日本大震災で被災した町に残った数少ない飲食店として町民やボランティアの胃袋を支えたが、客足の落ち込みもあって決断した。「そば一筋の人生に悔いはない」。店主の菅原武さん(81)がしみじみと語った。

 菅原さんは町内の志津川中を卒業後、東京都のそば店で修業した。同郷の末子さん(76)と結婚し、独立して都内でそば店を20年近く営んだ。50歳を前に故郷に戻り、1987年に現店舗を開いた。
 店は夫婦二人三脚で切り盛りしてきた。菅原さんはそばとつゆを仕込み、出前をこなした。実家が食堂だった末子さんも調理や接客で支えた。
 人気メニューはカレーそば。辛めのつゆにカレーの風味が絶妙に合った一品だ。かけそばは1杯450円。そばや丼物の値段は全て開店時から据え置いている。
 昼食時によく足を運んだという会社社長高橋福喜さん(64)は「飽きのこない味で、食後にくつろげる雰囲気も良かった。震災直後は食事ができる店が町に少なかったので助かった」と振り返る。
 津波で周辺は浸水したが、1階部分が駐車場、2階に店舗がある構造が幸いして深刻な被害を免れた。震災10日後に営業を再開。町に入ったボランティアにそばや丼物を振る舞うなどした。
 震災後に三陸自動車道が町内に延伸すると、店が面する国道45号の交通量が目に見えて減った。休日の客足が大きく落ち込んだ上、体力の衰えも実感するようになった。菅原さんは昨年秋ごろから店を畳むことを考え始めた。
 震災前の面影を残す店の明かりが町から消える。「地元で店を続けられて幸せだった」と末子さん。菅原さんは「妻がいたから仕事ができた」と感謝し、東京時代から守ってきた店先ののれんを見詰めた。


2019年02月05日火曜日


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