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<いわてを考える>薄日一瞬 負担は将来へ

真新しい災害公営住宅が立ち並ぶ岩手県釜石市中心部

 東日本大震災からの復旧・復興で岩手県には、累計1兆6700億円超の国費が投じられてきた。基盤整備に一定のめどが付きつつある一方、「ポスト復興」局面には財政上の難題が山積している。施設の維持管理費、被災者支援の今後、後回しにされた一般事業…。巨額復興財政の内実を探る。

◎第2部・復興財政(1)かさむ維持管理費

<県主導で建設>
 3日投開票の陸前高田市長選は、復興後を見据えた財政運営が大きな争点になった。論争を仕掛けた新人は、地方行政に精通する岩手県の元幹部職員だった。
 「ハコモノ行政をどんどん進めていけば維持管理費が増える。その負担を誰がするのか。国や県は、もう面倒を見ない」
 将来負担への懸念を棚上げにして事業を推し進めた復興・創生期間も2020年度末に幕となる。元県職員の問題提起は、そのまま古巣の県組織にも突き付けられる。
 県内の災害公営住宅は、予定されていた5854戸のうち5583戸(95.4%)が既に完成。市町が全戸を整備した宮城と対照的に、岩手は半数近い2846戸の建設を県が担った。
 沿岸部には北端から南端まで巨大防潮堤が連なり、自動開閉式の水門などを計約220カ所設置する。
 他県なら市町村が手掛ける公共事業も県土が広い岩手では、県による肩代わりが慣習になってきた。典型は県立病院の設置だ。全国最多の20病院を県立で運営する。復興事業でも県主導は当然の成り行きだった。
 17年度までに県が担った建設費は、災害公営住宅で約630億円、防潮堤と水門などで計約4000億円に上る。今後は災害公営住宅1億8000万円、水門など5億円という維持管理費が毎年度の支出になる。
 加えて一斉に整備した施設は、ほぼ同時期に耐用期限を迎える。県によると、災害公営住宅は70年、防潮堤は50年。更新費用は県負担となる見通しだ。
 「修繕時期をずらすなど、更新のピークが一気に来ないよう管理していく」(県財政課)と説明するが、多額の将来負担に変わりはない。

<震災後に黒字>
 震災前の県財政は、10年度決算で県債残高が1兆5280億円に達する惨状を呈していた。だが震災で県の会計規模は一変。11年度は、国庫支出金と震災復興特別交付税だけでも5000億円を超える国費が県予算に投入された。
 さらに復興事業が完成の日の目を見るのと軌を一にして、財政事情は少しずつ改善していく。通常事業の一部を復興事業に付け替え、県負担が国負担に切り替わったためだ。
 収入に占める公債費(借金返済額)の割合を示す実質公債費比率は15年度決算で20.5%。「危険水域」とされる20%を超えて過去最悪だった。
 復興特需を背景とする県税収入や地方交付税の増加もあって18年度決算は、新たな県債発行に総務相の許可が必要となる18%を下回る見通しだ。基礎的財政収支(プライマリーバランス)も、震災発生を境にして赤字から黒字に転じた。
 財政好転の兆しは、皮肉にも巨大な災禍によってもたらされたにすぎない。国の後ろ盾もあって県財政に差した一瞬の薄日も、復興の終焉(しゅうえん)とともに雲の中へと隠れていく。


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2019年02月05日火曜日


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