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<いわてを考える>将来の人口減対策必要

池上岳彦(いけがみ・たけひこ) 東北大大学院修了。新潟大教授などを経て1999年から現職。2017年から立教大陸前高田グローバルキャンパス副機構長。仙台市出身。59歳。

◎第2部・復興財政(5完)池上立教大教授に聞く

 東日本大震災の復興からポスト復興へ、財政運営の転換点に立つ岩手県。今後、何が課題になるのか。決算に基づいて池上岳彦立教大教授(財政学)に分析してもらった。

 【震災前に7000億円規模だった県の一般会計(歳入)は震災後、2倍近い1兆3500億円に膨らんだ】

<財政指標改善>
 普通だったら破綻するところを国が手厚く支援したことで、被災自治体の財政指標はむしろ改善している。例えば陸前高田市は将来の出費や負債の大きさを示す「将来負担比率」がゼロになった。
 ただ、これで楽になるとは言えない。地方交付税に頼る財政運営を基本としている以上、将来、人口が減れば交付額も減って苦しくなる。
 面積が広くて山あり谷ありの岩手では、公共サービスの経費が高くならざるを得ない。県立病院を数多く運営するなど、元々県が頑張らなければならなかった。同じ被災県でも仙台という政令市があり、平野が広がる宮城とは条件が異なる。
 【収入に占める公債費(借金返済額)の割合を示す「実質公債費比率」は2017年度決算で18.2%。全国平均(11.4%)を大きく上回り、北海道(21.1%)に次いで高い】
 復興事業は地元負担が少なく済んだが、復興・創生期間が終われば国の優遇措置も終わる。国は新たに整備した施設の維持管理費までは面倒を見ないし、これまで後回しにしてきた公共事業が始まれば、公債費負担は再び増加に転じる。
 【財政調整、県債管理、地域振興の財源対策3基金の残高は、13年度に710億円だったのが17年度には377億円まで減少した】
 財政調整基金は本来、予算編成が厳しいときに取り崩すが、実質公債費比率を下げるために取り崩した可能性も考えられる。
 【県の将来負担比率は震災後、減少しているものの17年度で224.2%と、依然として全国平均(173.1%)を上回っている】

<資金繰り影響>
 財政調整基金が減っても復興基金などがあるので将来負担比率が悪化する心配は少ない。ただ、復興基金は復興事業にしか使えない。普通預金のように使い勝手のいい財政調整基金が減れば、将来の資金繰りにも影響が出てくる。
 【復興後の県財政には、震災前と同程度の公共事業費に復興事業で整備した施設の維持管理費や終わりの見えない被災者支援事業費が加算される】
 国の復興支援はハード面が先行し、ソフト面やランニングコスト、将来にわたる人口減少対策は必ずしも万全でない。現状で県税収入の増加は見込めず、県単独での解決は難しい。
 県民税を一律で引き上げるなど都道府県が協調しての財源確保に取り組むことが必要になるだろう。


関連ページ: 岩手 経済

2019年02月09日土曜日


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