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<この人このまち>心のバリアフリー志す 障害があってもなくても住みやすい秋田へ

佐々百合子(ささ・ゆりこ)1975年千葉県柏市生まれ。東大大学院理学系研究科修了。製薬会社勤務などを経て現在は弁理士として働く。2015年にNAOのたまご設立。著書に「あなたは、わが子の死を願ったことがありますか?」(現代書館)

 障害があってもなくても住みやすい秋田とは。重症心身障害のある長男尚武(なおたけ)君を育てた佐々百合子さん(43)が市民団体「NAOのたまご」を4年前に秋田市で設立し、地域に対話の種をまいている。講師と参加者が同じ視線の高さで話し合う「金魚鉢」などユニークな仕掛けで、声なき声をすくい上げている。(秋田総局・橋本俊)

◎市民団体「NAOのたまご」代表 佐々百合子さん(43)/声を上げ、学ぶことが、誰もが住みやすい社会につながる

 −尚武君の笑顔を描いた絵。すてきですね。
 「2014年に2歳3カ月で旅立ちました。しばらくして子育てについて人前で話す機会があり、尚くんの絵を描いてもらったんです。障害のある子どもを育てるお母さんと話すと共感することが多くて、それならと団体を立ち上げました。交流サロンとして始め、現在は講演会やバリアフリーコンサートも手掛けています」

 −12年に秋田に来たころは苦労したそうですね。
 「夫が弁理士事務所を継ぐため、東京から知り合いのいない秋田市へ移住しました。尚くんは重い脳障害があり、とにかく夜に寝ない。てんかん発作もあり、24時間の介護でした」
 「医療機関などに一時預かりを頼んだら、『こんな小さな子は前例がない』と断られたこともあります。苦労して身体障害者手帳を取得しても、不便な郊外に通うはめに。『大家族』で『車がある』が前提なんです」
 「でも東京では小児に対応した訪問サービスもあります。こちらが我慢することはないんです」

 −講演会では、講師と佐々さんが車座で話し、参加者が円状に囲む金魚鉢(フィッシュボウル)という対話手法を取っていました。
 「互いの距離が近いので質問しやすく、話し合いへの参加も促せます。円の外側で子どもが遊んでいても気にならない。みんなで一緒に考えていく姿勢を大切にしています」
 「障害者の支援団体は障害の種別に分かれがちで、講演の内容も難しいものが目立ちます。私は障害があってもなくても楽しめる『心のバリアフリー』をモットーにしています」

 −今後の展望は。
 「息子のような重症心身障害児のデイサービスもやってみたいですね。介護する家族が月1回でもゆっくり眠れるような支援があれば、それを目標に日々を過ごせます。気軽に手を借りられるようになればいい」

 −私にも障害のある家族がいます。佐々さんの頑張りには頭が下がります。
 「誰かと比べる必要はないんです。大変なら大変なんだと言いましょう。それは障害の問題に限りません。声を上げ、学ぶことが、誰もが住みやすい社会につながるんだと思いませんか」


関連ページ: 秋田 社会

2019年02月18日月曜日


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