宮城のニュース

<縮小の先へ 被災地と人口減>第1部 なりわい・漁業/日本人船員 確保難しく

係留された漁船が並ぶ気仙沼港。船員の確保が大きな課題だ

 人口が減る。地域を支える担い手が足りない。人口減少局面で起きた東日本大震災は、過疎化や少子高齢化を加速させた。震災から間もなく8年。縮む被災地の先に広がる風景は−。「生業(なりわい)」「生活」「インフラ」の三つをキーワードに、先鋭化する課題に向き合い、模索する姿を追った。

 遠洋マグロ漁船を所有する漁業会社の幹部が、海の男が相手の時とは違って優しく語り掛けた。

<なりふり構わず>
 「給料は気仙沼の陸上で働く2倍ぐらいになる。船に住めるから、家賃もいらない。お金はたまるよ」
 気仙沼市の気仙沼向洋高で15日、大日本水産会(東京)などが主催する高校生向けの漁業ガイダンスがあった。地元の遠洋、近海マグロはえ縄など漁業会社13社が教室に大漁旗を飾ってブースを設け、2年生の男子生徒に仕事内容や賃金を説明した。
 ガイダンスは2017年、全国各地の水産高校を対象に始まった。大日本水産会の木上正士事業部長(57)は「若い世代を取り込まないと、船を動かせなくなる会社が増える」と業界内の危機感を代弁する。
 農林水産省の漁業就業動向調査によると、17年の漁業就業者数は15万3000人で、震災前の10年(20万3000人)から5万人も減った。65歳以上の高齢者は5万9000人と4割近くを占め、上昇傾向だ。
 「今より給料を高く払うから、うちに来ない?」
 気仙沼市の漁業会社社長は、雇っていた船員にかかってきた2年前の電話が今も忘れられない。
 着信は、長い航海を終えて陸が近づき、携帯電話の電波が通じた直後。見ず知らずの漁業会社からの誘いだったという。社長は「水揚げもしないうちに電話をかけてきた。あまりに失礼だと思った」と振り返る。
 漁船の運航は、船の大きさに応じて必要な海技資格や乗組員の人数が定められている。日本人船員の確保が厳しさを増す中、高い報酬を持ち掛けて引き抜く行為は珍しくない。

<外国人頼み拡大>
 震災で壊滅的な被害を受け、人口減少に拍車がかかった三陸沿岸各地の漁港でも担い手不足は深刻だ。日本人の労働力不足を外国人船員が補う。
 遠洋マグロはえ縄の大半は、震災前から乗組員の7割がインドネシア人。安い賃金の外国人が浜を支える光景は、沿岸漁業にも広がりつつある。
 大船渡市の綾里(りょうり)漁港では、本年度までに4隻のイカ釣り漁船がインドネシア人の技能実習生を1人ずつ乗せた。船頭の要望を受け、綾里漁協が確保した。
 浜では若い漁業者が減少の一途。20年ほど前は綾里沖で日帰りできた漁場が日本海へと遠くなり、近年深刻な不漁に陥っている。
 第78明神丸の野々浦浩祐船頭(46)は「収支はぎりぎり。日本人の若者にとって稼げず、魅力がなくなった」と漏らす。
 6隻の遠洋マグロ漁船を所有する漁業会社臼福本店(気仙沼市)は、新しいマグロ漁船を建造中だ。10月に7隻目が完成し、ようやく震災前の数に戻る。
 臼井壮太朗社長(47)は「船の戦力を落とさずに、日本人船員をどう配置するかが今の課題だ。次世代に漁業を伝えるのはわれわれの責務。法律改正も含めて漁業の在り方を抜本的に見直さないと、世界とは戦えなくなる」と指摘する。


2019年02月21日木曜日


先頭に戻る