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<週刊せんだい>特別養子縁組(3)愛情込め 優しく何度も 「真実」どう知らせる

絵本を読む(右から)池田愛さん、ユイちゃん、祥さん=2月上旬、仙台市太白区

 「ねぇねぇ、もういちどききたいな」。仙台市太白区の団体役員池田愛さん(44)がいつもの絵本を読む優しい声がリビングに響く。ページがめくられるごとに身を乗り出す長女ユイちゃん(5)。夫で会社員の祥さん(37)がにっこり見詰める。
 絵本は「ねぇねぇ、もういちどききたいな わたしがうまれたよるのこと」(偕成社)。登場する女の子とその両親に血のつながりはない。「ユイもこうだったんだよ」。愛さんと祥さんは生まれたばかりのユイちゃんを特別養子縁組で迎え、2歳のころから、生みの母が別にいることを話してきた。

 養子縁組家庭などで、育ての親であるという事実を伝えることを「真実告知」と呼ぶ。かつては血縁がないことを隠す風潮もあったが、現在は子どもの出自を知る権利を守り、生い立ちを知らせるべきだという考えが一般的。時期や方法は家庭による。池田さん夫婦は「最初から言う方がいい」という考え。ユイちゃんは生みの母の存在を自然に受け止めている。
 愛さんは父の転勤で中学、高校の5年間、米国に滞在。学校に養子の生徒が数人いて、大人は「養子を迎えたの」と誇らしげに語るなど、養子は肯定的かつオープンに受け止められていた。愛さんと祥さんもママ友や職場の同僚らに伝えている。
 「夫婦だって血はつながっていなくても家族。血のつながらない家族も幸せで、隠すようなことではないんです」(愛さん)

 仙台市青葉区の会社員佐々木健二さん(53)と妻でNPOスタッフの啓子さん(42)も、特別養子縁組で迎えた8歳、6歳、3歳の3人の子どもたちが言葉を話す前から、優しい言葉で繰り返し伝えてきた。
 「お母さんのおなかには赤ちゃんが入らなかったんだ」「あなたをおなかの中で大切に守って産んだ人がいるんだよ」。必ず「大好きだよ」「生まれてくれて、ここに来てくれてありがとう」「ずっと家族だよ」と言葉を添える。
 最初は何を言うか迷ったという啓子さん。だが今は「愛を込めて気持ちを伝えることを大切にしている」という。
 子どもたちは、生みの母について「会ってみたい」「どんな声をしているのかな」などと口にすることもしばしば。啓子さんは「思っていることを話しやすい雰囲気を作り、受け止めたい」と優しく見守る。
 3人の生みの母が抱える背景はそれぞれ異なる。「子どもたちに向き合って、成長に応じ、何を言うか考え考えやっていく」つもりだ。
(子どもは仮名)


◎託す背景/無職や不安定就労多数

 特別養子縁組は、実親が育てられない子どもと養親とが新たな親子関係を結ぶ仕組み。妊娠に悩み「育てられない」と考える女性は、経済的困難などの背景を抱えていることが多い。
 静岡大人文社会科学部の白井千晶教授(家族社会学)は2015、16年に民間の養子縁組あっせん団体6団体で面談に至った妊娠相談事例208件を調査。経済状況(複数回答)は「無職、非正規就労」「低収入、養育費用なし」がともに50%を超えた=グラフ(右)=。「無職」「非正規就労」「低収入」のいずれかに該当する事例は7割。87%は配偶者がいなかった。
 相談時の就学状況=グラフ(左)=をみると、学生ではない人が67%。うち経済的困難を抱える事例が75%に達し、半数近くは関係が良くないなどの理由で親の支援が見込めなかった。
 相談者のうち約8割が特別養子縁組に至った。
 白井教授は「欧米先進国と比べ養子縁組を選択する社会人が多い。出産前後やシングルマザーに対する支援が手薄な現状が背景にあり、無職や不安定な就労では妊娠、出産、子育てを乗り切れない」と分析する。
 特別養子縁組を選択した女性15人へのインタビュー調査(10〜13年)では、悩んだ末「養親に託す方が子どもにとって幸せ」と判断した事例も少なくなかったという。「出産前後の生活支援など、入り口で困っている妊婦に特化した支援が必要だ」と話す。
 虐待や性被害による妊娠などが背景の場合もある。真実告知について東京都のあっせん団体代表・小川多鶴さんは「うそは伝えず本当のことを話すべきだが、全てを洗いざらい言う必要はない。何を伝えるか考えることが大切」と言う。
 民間団体や児童相談所が保存する記録に将来子ども自身がアクセスする可能性もあり「知らせなかった情報に触れても、親の意図を理解できるような関係づくりこそ重要」と指摘する。


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2019年02月21日木曜日


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