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<縮小の先へ 被災地と人口減>第1部 なりわい・農業/情報技術やAIに活路

高泉さん(右)のハウスを訪れ、イチゴ栽培のアドバイスをするGRAの柴田さん=宮城県山元町

 人口が減る。地域を支える担い手が足りない。人口減少局面で起きた東日本大震災は、過疎化や少子高齢化を加速させた。震災から間もなく8年。縮む被災地の先に広がる風景は−。「生業(なりわい)」「生活」「インフラ」の三つをキーワードに、先鋭化する課題に向き合い、模索する姿を追った。

 湿度、二酸化炭素濃度、水の酸性度…。パソコンに表示されるのは、イチゴの栽培ハウスから届く重要な環境データだ。

<経験不足カバー>
 宮城県山元町の農業生産法人GRAは町内3棟、県外5棟のハウスのイチゴ生産をサポートしている。
 生産者はGRAが2016年に始めた「イチゴアカデミー」の卒業生。東日本大震災の津波被害を受けた山元町など産地の復興を担う新米農家たちだ。
 山元町で就農して1年目の高泉博幸さん(32)は、脱サラしてアカデミーで1年間学んだ。経験不足は否めず、GRAの支援を仰ぐ。
 病害虫発生の芽を摘んでもらったこともある。「夜に湿度90%が5時間続いている」。GRAの生産管理リーダー柴田修司さん(40)がカビが増殖する恐れを指摘し、換気を促してくれた。高泉さんは「常に見守ってくれて心強い」と感謝する。
 山元町ではイチゴ農家の大半が津波で被災した。18年産は面積約28ヘクタールで震災前の75%、収量は最新鋭ハウスの導入効果で約1270トンと92%まで回復した。ただ、農家は65戸で震災前の129戸から半減した。
 担い手をいかに育て、支援するか。雇用創出を目指し、11年に創業したGRAが掲げるのが「情報技術の活用」と「ノウハウの共有」だ。
 GRAは、町内の卒業生3戸が生産するイチゴの大半を買い取り販売する。仲間が増えれば、病害虫がどんな時に出るのか、出荷を需要のピークにどう合わせるのかなど、情報やノウハウをさらに蓄積できる。
 「データがあるから、経験ゼロでも参入できる。新規就農を支援し、仲間を増やしたい」。柴田さんが抱負を語る。

<作業効率アップ>
 東京電力福島第1原発事故の影響が続く福島県。担い手不足はより深刻だ。農林水産省の調査で、18年の販売農家人口は17万4600。10年の6割以下で東北で唯一、10万以上減った。
 「除染で農地の状態が悪化した。イノシシなどの獣害もあり、生産意欲が落ちた」。避難指示が17年3月末に町内の一部で解除された浪江町の職員が嘆く。
 ここでも注目されるのが最新技術。人工知能(AI)を活用した「スマート農業」が存在感を増す。
 16年7月にほぼ全域で避難指示が解除された南相馬市小高区で今月19日、タマネギ畑の耕運作業を視察した農業関係者から感嘆の声が上がった。
 視線の先にあるのは無人のトラクターだ。衛星利用測位システム(GPS)とセンサーを内蔵し、畑の端にたどり着くと正確に折り返した。農業生産法人・紅梅夢ファームが昨年導入し、リモコン操作で耕起や代かきをしている。
 法人は17年、小高区内の七つの営農組織が設立した。「農地を守る」を使命に、20年の作付面積目標を18年から倍増の100ヘクタールに設定し、将来は250ヘクタール規模を目指す。
 住民帰還の足取りは重く、従業員は大幅に増やせそうにない。それでも佐藤良一社長(65)は前を向く。
 「無人機の導入で作業効率は格段に増した。『機械なんかに任せられるか』と言う余裕はない。頼れるものは頼る」


2019年02月24日日曜日


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