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<ニュース深掘り>大消費地から見た減反廃止元年 経営転換こそ補助必要

 政府が2018年から国による主食用米の生産調整(減反)を廃止すると決めて、5年余りたった。安倍晋三首相は当時、生産者自らが需要を見極めて生産する「経営力」を重視する姿勢を打ち出した。大消費地・東京で取材した「廃止元年」。農政転換の目的とは裏腹に、飼料用米優遇の補助金体系など農家を縛る減反システムの一部は根強く残っている。生産者にとっては経営力を発揮しにくい現状がある。

 近年の減反は、二つの要素で成り立っていた。
 一つは国から都道府県への生産数量目標の配分で、18年産からなくなった。農林水産省は代わりに適正生産量を意味する「主食用米等生産量」を提示。強制力こそないものの、都道府県、生産者ごとのおおよその生産量が決まる仕組みは減反政策と大きく変わらなかった。
 もう一つは作付け抑制に伴う補助金で、これは一部が残る。減反協力農家に10アール当たり7500円を支払う「コメの直接支払い交付金」は廃止されたが、「水田活用の直接支払い交付金」は継続された。
 飼料用米に誘導する政策効果は絶大で業務用米の供給減、価格上昇を招いた。コンビニエンスストアはおにぎりを小さくし、牛丼店は値上げに走った。パックご飯など加工食品も値上げの動きが出ている。
 福島大の生源寺真一教授(農業経済学)は「1人暮らしや若者など中食や外食の依存度が高い世帯には深刻な問題」と指摘する。中食業者の業界団体日本炊飯協会の福田耕作顧問も「一度コメを食べなくなった若者は、収入が増えても食べるようにならない」と表情を曇らせる。
 ともに所得が低い若者が起点となり、コメ離れが加速する未来を予想する。
 コメの消費動向は時代の推移とともに変化した。農水省によると、国内消費量における中食・外食の割合はグラフの通り。17年度は20年前と比べ約10ポイント増えた。背景には単身、共働き世帯の増加がある。

 家庭での需要が減る中、好調な中食・外食を見逃す手はない。生産者、農協、コメ卸は中食・外食との事前契約を定着させた上で、市場に求められる価格、品質を見極めることが肝要になる。行政は事前契約を拡大するための支援策を一段と強化するべきだ。
 一方で生産者の収入確保も重視しなくてはならない。手頃な価格のコメ供給と生産者所得の確保。矛盾にも映る二つの命題を実現する方策が欠かせない。
 全国農業協同組合中央会(全中)は1月、「米×コメ複合」のスローガンを打ち出した。転作補助金が得られる飼料用、輸出用、加工用、備蓄用など非主食用米と主食用米を組み合わせた複合経営に取り組み、10アール当たりの収益を重視するよう奨励する。
 非主食用米への転換は過渡期の政策として重要だが、現行水準の補助金を続けられる保証はない。いずれ行き詰まるのは自明だ。コメとコメ以外の作物を組み合わせた経営への転換こそが求められる。
 ブランド米と業務用米、輸入頼りとなっている麦や大豆、飼料用トウモロコシ、収益性の高い果樹など園芸作物を組み合わせる。それこそが減反廃止の本来の目的だったはずだ。
 現在の政策では、生産者は補助金という「安定収入」が大半を占める飼料用米を選ばざるを得ない。消費者や食品製造業者が求める作物を生産し、販売収入がおのずとアップする経営転換にこそ、補助金を振り向けるべきだろう。
(東京支社・小木曽崇)

[水田活用の直接支払い交付金]主食用米より販売収入が少ない転作作物の生産者に対し、所得を補償するための交付金。麦・大豆・飼料用トウモロコシには10アール当たり3万5000円、加工用米は2万円、飼料用米は収量に応じて最大10万5000円が支払われる。


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2019年02月25日月曜日


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