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<震災8年>雄勝法印神楽、津波被害から復活 新たな担い手の若者2人、保存会加入目指す

神楽の稽古に励む泰久さん(右)と庄太さん=22日、石巻市雄勝町

 宮城県石巻市雄勝町に伝わり、東日本大震災の津波被害から復活を遂げた国指定重要無形民俗文化財「雄勝法印神楽」を伝承しようと、地元出身の若者2人が保存会への加入を目指し、稽古に励んでいる。約600年以上続くといわれる神楽は地域復興のよりどころだ。入会の関門は3月3日の発表会。幼い頃から夢見た神楽師へ2人の挑戦が続く。
 地元の葉山神社にある神楽舞台の保管庫で22日夜、会社員の阿部泰久さん(25)=石巻市=と宮城県女川町職員の阿部庄太さん(20)=女川町=が衣装をまとい、刀を手に向き合った。
 太鼓のリズム、舞の所作、振り下ろす刀の角度。先輩神楽師の動きを目で追い、一つ一つの動きを確かめる。荒々しさも伴う雄勝法印神楽の稽古は体力を使う。2時間を超す指導に2人は汗をしたたらせた。
 「物心がつく前から神楽が好きだった。神楽は憧れの存在」という泰久さんは大須小時代、授業で神楽を学び、魅了された。
 大崎市の高校在学中に震災に見舞われ、古里の雄勝地区は壊滅的な被害を受けた。災害支援に尽力する自衛隊員に感銘を受け、卒業後は陸上自衛官として多賀城駐屯地に勤務した。
 神楽師になる夢は諦めきれなかった。震災から7年が過ぎた昨年7月、「自衛官をしながら練習するのは難しい」と考え、退官を決意。翌月に地元に帰り、保存会の門をたたいた。
 庄太さんも大須小の学校行事で神楽に触れ、興味を持った。曽祖父が神楽の師範だったと聞いたことがあり、親近感も強かった。町職員をしながら泰久さんと同じ頃、保存会への入会を志した。
 庄太さんは「春になると浜から神楽の音色が聞かれ、身近な存在だった。復興へと向かう古里で、生涯神楽を続けたい」と決意をにじませる。
 保存会の会員は今、20〜70代の約20人。津波で流失した面や衣装は復活を願う全国の支援などでそろえた。復興の象徴として活動の場は国立劇場(東京)やロシアなど世界に広がる。
 指導に当たる阿部良司郎(よしろう)さんは約半世紀、神楽と共に生きてきた。「祭りをやろうというエネルギーが地域をもり立てる。太鼓、笛、舞の三拍子がそろった一人前の神楽師になってほしい」と期待を込める。
 小学生の時に経験した子ども向けの神楽とは重みが違う。本物を演じられる喜びをかみしめ、2人は稽古に心血を注ぐ。


2019年02月26日火曜日


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