広域のニュース

<安住の灯>「復興曲線」過程を可視化 最適解探求する姿勢を

[むらお・おさむ]横浜国大大学院修了。東大生産技術研究所助手、筑波大システム情報系准教授を経て、2013年4月から現職。専門は都市防災、復興計画。横浜市出身。53歳。

 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故の被災地では、津波による損壊や避難に伴う住宅の移転用地、災害公営住宅など計約5万戸分の整備計画が進み、工事は最終盤に差し掛かった。仮設住宅を出た被災者は自宅建設の重い負担や、新たな地で暮らす不安を抱える。住まい再建策の現状と被災者生活再建支援法の概要、東北大の研究者が作成した「復興曲線」に基づく分析をまとめた。(「震災と住まい」取材班)

◎東北大災害科学国際研究所教授 村尾修氏

 震災後のまちが元に戻る過程で何が起きているのか、復興を比較するためには定量化の物差しが必要になる。被災者にとって住宅は重要で、可視化しやすい。事業ごとのデータを取り、復興曲線を作成した。
 岩手、宮城、福島3県の37市町村で、住宅再建に向けて防災集団移転促進事業、漁業集落防災機能強化事業、土地区画整理事業、災害公営住宅整備事業を実施した379地区を対象とし、年度ごとに完工地区数の推移を分析した。
 全体では、防災移転を採用した地区が85%を占め、漁業集落は主に岩手で実施された。防災移転、漁業集落は約3年で完工地区数の割合が半数に達したが、区画整理は2倍近い6年弱を要した。災害公営は地域差はあるが、おおむね4年となっている。
 防災移転は比較的小さなコミュニティーで移転するため合意形成がしやすく、土地が見つかれば早く着工できたようだ。漁業集落も同様と言える。ただ商業施設などは形成されないため、まちのにぎわいは少ない。新しい住民が今後入ってくる可能性の低さが懸念される。
 一方、区画整理は現地再建するため、更地にし、防潮堤やかさ上げなどの津波対策が必要になる。まちの歴史や住民の愛着、記憶が色濃く残っている場合が多く、それらを新しいまちにどう取り入れるかを決めるのは時間がかかったとみられる。インフラがしっかりし、商工業など多様性がある場所として住まいを再建できるが、完成を待てずに出て行った被災者もいる。
 災害公営住宅は、需給バランスが課題になっている。入りたくても入れなかったり、着工後のニーズに合わず空室が目立ったりするケースも多い。
 住まいやまちの復興を考えたとき、立場によって評価は変わる。自治体、被災者個人、地域住民としての個人、そして将来の住民。それぞれの立場を調和させながら、最適な解を見つけていく姿勢が重要になる。
 2015年の国連防災世界会議で採択された指針「仙台防災枠組」では、ビルド・バック・ベター(より良い復興)の原則が盛り込まれた。復興のデザインは物的環境だけでなく、人的活動を加えながら時間をかけて実現されるものだ。
 大震災から8年がたち、住まいとまちの形が見えてきた。当初描いた未来像とは異なる部分があるかもしれないが、これから自分たちのまちとしてどう育て、つくり続けるかを考えていかなければならない。

[被災者生活再建支援法]地震や洪水といった自然災害で、住宅損壊などの被害を受けた世帯に対する支援金の支給を定めた法律。1995年の阪神大震災を機に議員立法で制定された。
 住宅の被害程度と再建方法に応じて最大300万円を支給する。支援金の財源は47都道府県が拠出する基金を活用し、国が半額を補助。東日本大震災では国が5分の4を負担した。
 全壊、大規模半壊などに加え、長期避難や半壊でも居住に危険性があって解体した場合が対象で、基礎支援金の上限は100万円。他に住宅の建設、補修などの再建方式に応じ、最大200万円の加算支援金が被災者に支払われる。
 支援金を巡っては、全国で災害が多発しているため基金が減少。一方、被災者からは半壊など対象世帯の拡大や、住宅再建の十分な原資となるよう増額を求める声が上がっている。


関連ページ: 広域 社会 安住の灯

2019年02月27日水曜日


先頭に戻る