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<週刊せんだい>特別養子縁組(4)未来へ情報の種まき 多様な親子の形理解を

パンフレットについて話し合う佐々木さん(右)と池田さん=仙台市青葉区の市市民活動サポートセンター
[みずの・のりこ]東大法学部卒。名古屋大法学部教授などを経て98年から東北大法学部教授。法制審議会の各種部会委員を歴任する。東京都出身。64歳。

 「ここはグループの説明ね」「こっちには体験談を入れる?」
 1月下旬、仙台市青葉区の市市民活動サポートセンターで、NPOスタッフの佐々木啓子さん(42)=青葉区=と団体役員池田愛さん(44)=太白区=がパンフレットに盛り込む内容に頭を悩ませていた。
 パンフレットで紹介するのは、特別養子縁組制度を知ってもらおうと活動しているグループ「よーし・えんぐみcafe−sendai」。ともに特別養子縁組で子どもを迎えた佐々木さん、池田さんら3人がメンバーだ。3月1、2の両日は、市内で同名のイベントを開く。
 特別養子縁組は、実親が育てられない子どもが養親と新たな親子関係を結ぶ制度。佐々木さんは「子どもが温かい家庭で安心して育つための仕組みだが、理解していない人も多く、偏見もある。情報の種をまき、血がつながらなくても幸せな家族の在り方を社会に広げたい」と話す。
 自身が、現在8歳、6歳、3歳の3人を迎える際、身近で事例を見聞きする機会はほぼなく、正確な情報や体験を気軽に聞ける場が必要と感じた。乳児の遺体遺棄事件などがあると「縁組で助かる命だったのではないか」と思わずにいられない。
 国は制度を利用しやすくしようと法改正などを進めるが「まだまだ知られていない」と感じる。
 昨年11月、メンバー3人で池田さんの長女ユイちゃん(5)が通う幼稚園に出向いた。養子縁組家族の姿を描いた絵本の読み聞かせの後、池田さんは夫妻とユイちゃんが皆とは違う方法で家族になったこと、互いを大事に思っていることを子どもたちに話した。「いろいろな家族の形があると、娘の友達に知っておいてほしかった」と言う。
 佐々木さんも園児に伝えた。「家族って、大好きな人と一緒に作っていくものなんだ」。種まきの先に、特別養子縁組で結ばれた子どもと家族の幸せが広がると信じる。
(子どもは仮名)

 3月1、2の両日に開く「よーし・えんぐみcafe−sendai」は、1日が仙台市青葉区一番町の市市民活動サポートセンターで「新制度から読み解く特別養子縁組」(定員35人)、2日が同区春日町のThe6(ザ・シックス)で「特別養子縁組家族への5つの質問」(同25人)。両日とも午前10時からで参加費500円。事前申込制。連絡先は佐々木さん080(6059)6845(午前9時〜午後6時)。

 国が利用促進を進める特別養子縁組はどのような制度なのか、仙台圏の家族の姿などを通じ紹介する。

◎インタビュー/実親と養親へ支援必要 東北大大学院法学研究科・水野紀子教授

 特別養子縁組制度に関する民法の改正案が今国会に提出される。法制審議会(法相の諮問機関)の特別養子制度部会委員として見直し作業に関わった東北大大学院法学研究科の水野紀子教授(民法・家族法)に課題などを聞いた。
     ◇
 家庭裁判所の審判を2段階に分け、手続きに児童相談所長が関与できるようにしたことなど、今改正で制度が抱える問題の一部が是正される。対象年齢も拡大されるが、幼いころから育ててきた里親家庭との縁組のようなケースに限るべきで、慎重に取り組まないといけないだろう。
 虐待で児童養護施設に入所する児童に特別養子を安易に用いるのは、素人の私人である養親の負担が大きい。西欧の先進諸国でも重度の被虐待児の家庭養育は難しく、プロが対応する。養親は養育里親と違い手当てはない。離縁請求権もない。手厚い支援がない状態で委ねるのは心配だ。
 西欧では国が実親をできる限り支援し、どうしても育てられない、育てたくない場合に国が親子関係を切って国家後見で子どもを引き受け、養子に出す。
 日本の養子縁組はもともとは家同士のやりとりが基本で、戦後は親同士のやりとりとした。特別養子も養親と実親のやりとりに家裁の許可を介在させただけで、前提となる実親への支援がない。実親との法的関係を切る作業は養親ではなく国がするのが筋だ。
 日本社会は家族への公的介入を怠ってきて、家族を支援する制度が足りない。児相職員を増やし、お金をかけ、社会が子どもを守らなければいけない。実親、養親への育児支援が必要となる。
 また、民法の条文で、実親の養育に問題があることを特別養子縁組の要件にしており、偏見につながりかねない。「子の福祉のため」という表現で十分ではないか。
 法律や制度は、さらに抜本的な見直しが不可欠だ。


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2019年02月28日木曜日


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