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<岩手・大槌旧庁舎解体終了>伝承の理念具体化へ/平野町長に聞く

旧庁舎解体後の震災伝承について語る平野町長

 東日本大震災の発生から間もなく8年となるのを前に、震災の津波で職員多数が犠牲になった岩手県大槌町旧役場庁舎の取り壊しが終了した。数年に及んだ町内対立は一応の決着を見たが、町への不信感を募らせる職員遺族も少なくない。迷走が続く町のトップ、平野公三町長(62)に聞いた。(聞き手は釜石支局・東野滋)

<次の世代へ責任果たす>
 −旧庁舎解体で2015年町長選の公約を達成した。
 「旧庁舎解体は復興まちづくりの一つのテーマであり特別な感慨はない。町の震災伝承コンセプト『忘れない、伝える、備える』は、旧庁舎保存を求めた町民の思いと共通するはず。取り組みを具体化し、持続させていく」
 −震災遺構としての価値や防災教育の観点より、旧庁舎を見るのがつらい人に寄り添うことを優先した。
 「どの意見にも納得できる部分があったが、目にするのを苦痛に感じる町民の心の負担を少しでも軽くしたいという思いは変わらなかった。町長選前に町内全戸を訪問し、解体を望む声が多数派であると認識していたのが大きい」
 「将来世代には、旧庁舎で起きたことを覆い隠すのではなく、きちんと伝えることで現役世代の責任を果たしたい」

<職員遺族と今後も対話>
 −職員遺族が声を上げて死亡状況調査の実施が決まった。
 「復旧復興に追われ、職員遺族に8年近く何もしてこなかったのは事実だ。雇用主としての責任を指摘されたことを重く受け止め、今こそ向き合いたい。町への不信感は承知しているが、対話を重ねていく」
 −遺族に犠牲職員追悼式への出席や職員研修での講話を要請し、反発を招いている。
 「以前から追悼式に遺族がいない状況を問題だと思っていた。震災後に採用した職員が半数近くになる中、講話は自分の命を守ることについて深く考える機会となるはずだ」
 「ただ、遺族との事前の意思疎通が不十分で唐突に感じたかもしれない。配慮に欠けていた点は反省したい」

[岩手県大槌町旧役場庁舎]当時の町長と職員の計28人が犠牲になった。当時、総務課主幹(防災担当)だった平野公三町長ら22人は屋上に逃れた。その他のケースも加えた町職員の犠牲は町長を含め総計39人。解体差し止めを求めた住民監査請求や住民訴訟は、いずれも訴えが退けられた。


2019年03月03日日曜日


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