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<いわてを考える>第3部・復興施策(2)教育・伝承 授業で震災遺構見学も

震災学習で震災遺構「たろう観光ホテル」を見学する子どもたち
たろう観光ホテル社長・松本勇毅さん

 岩手県教委は2012年2月、東日本大震災を学習教材とする際の指針「いわての復興教育プログラム」を作成。震災学習用の副読本を配布し、県内全域で復興教育を進めている。

<実情に応じて>
 地域の実情に応じた授業の展開も教育プログラムの特徴の一つだ。
 岩手県大槌町に開校した小中一貫の「大槌学園」は「ふるさと科」の授業で町の被災状況や復興の歩みを学ぶ。内陸部の学校は沿岸部を訪れて被災者の話を聞き、災害発生時の避難所設営を疑似体験する。
 18年7月には「NIE全国大会」を被災地で初開催。防災・復興をテーマにした県内各校の取り組みを紹介した。

<NPOが窓口>
 沿岸市町村では観光協会やNPOが窓口となり、地元住民が被災体験を伝える活動を続けている。
 宮古市では宮古観光文化交流協会がガイドツアー「学ぶ防災」を実施。語り部ガイドが震災遺構「たろう観光ホテル」を案内し、震災当日にホテル6階から撮影した津波映像を放映して当時の状況を説明する。
 陸前高田市には今秋、県の津波伝承館が開館する。市観光物産協会は県、市と連携した「語り部・ガイド養成講座」で、語り部の資質向上を目指す。
 震災当時の資料を後世に残すために県は17年3月、インターネット上に「いわて震災津波アーカイブ」を開設した。閲覧できる写真や新聞記事は約24万点。被災県では最大規模を誇る。アクセス数は累計29万回を超えた。

◎災害の恐怖伝える たろう観光ホテル社長・松本勇毅さん(62)

 震災では、地震で助かったにもかかわらず多くの人が津波の犠牲になった。震災遺構や映像、被災者の体験談を通して自然災害の恐ろしさを伝えたい。
 たろう観光ホテルから撮った映像を見た人の多くは、津波が防潮堤を越えてからホテルに達するまでの時間の短さに驚き「とにかく逃げなければならない」と認識を改める。
 これこそ私たちが一番伝えたいことであり、教育や伝承に関する出費は惜しむべきではない。その意味では、この8年で震災遺構の保存が市町村ごとに進んだのは良かった。
 語り部によるガイドツアーを民間だけで維持していくのは難しく、行政の支援が必要になる。宮古市田老地区では市の外郭団体である宮古観光文化交流協会がツアーを担っており、こうした形での活動が望ましい。
 語り部の層に厚みを持たせる取り組みも必要だ。現在活動中の人たちにとどまらず、自身の経験を話したいと思っている人、時間がたって「生きているうちに伝えたい」と思うようになった人も大勢いるだろう。
 田老地区で運営している新ホテルの宿泊客は、観光の目的が震災の教訓を学ぶことから美しい海岸や海の幸を楽しむことに変化してきたように感じる。
 震災の風化を強く感じるが、自然の流れには逆らえない。今後は震災そのものの説明に加え、復興まちづくりや地域防災の取り組みを伝える取り組みも必要になるだろう。


関連ページ: 岩手 社会

2019年03月06日水曜日


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