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<スマホ決済元年>東北の現場から(上)大手 顧客情報獲得へ攻勢

球場内で楽天Edyチャージ機について説明する大石氏=2月15日、仙台市宮城野区の楽天生命パーク宮城

 2019年は後に、「スマートフォン決済元年」と評されるかもしれない。消費税増税に伴うキャッシュレス決済のポイント還元が10月に始まり、利用者の増加が確実視される。現金払いが根強い東北でも、大手IT企業がQRコードによるスマホ決済のシェア拡大を急ぎ、地域金融機関は独自サービスを模索している。スマホ決済の将来像を追った。(報道部・高橋一樹)

 国内初の「キャッシュレス球場」が4月2日、仙台市に誕生する。プロ野球東北楽天を運営する楽天野球団は、楽天生命パーク宮城(宮城野区)のホーム開幕戦から全決済を電子化する。チケットにグッズ、ビールに牛タンまで現金では買えない。

<普及の一大拠点>
 「決済のスピードが上がれば観客が大事な場面を見逃すことも減り、満足度は高まる」。同社の大石幸潔事業本部長は力を込める。
 キャッシュレス球場の狙いは、観客の利便性の向上以外にもある。
 楽天グループが選択した決済サービスはクレジットカードとデビットカードを除き、カードなどにチャージする「楽天Edy」や、スマホQR決済の「楽天ペイ」など、いずれも同社系サービスだ。スイカなど年齢層を問わずに普及し、最も身近な交通系電子マネーは使えない。
 特に利用実績の少ない楽天ペイには「ビールもドリンクも100円引き」「グッズ購入で10%還元」といった特典を用意した。年間170万人が訪れる球場を、スマホ決済普及の一大拠点とする、という思惑がにじむ。
 スマホQR決済は多業種で参入が相次ぎ、注目を集める。一方、スマホの画面を開くなどの操作が必要で、カードをかざすだけの他の電子マネーに比べ、支払う側の利便性が高いとは言えない。
 各社が破格の特典を用意し、普及を目指すのには訳がある。誰もが利用するスマホが決済端末になれば店舗側が将来、得られた膨大な顧客データを活用して商品の選択や開発、経営の効率化に生かすことができるからだ。
 大石氏は「多くの観客とスマホでつながることで、ファンクラブ会員以外の方にも求める情報を提供できる。浮いたコストはサービスに反映でき、観客のメリットにもなる」と説明する。
 楽天野球団は今季、球場の楽天Edyのチャージ機を24台から100台以上に増設。サポートデスクを5カ所設け、開幕当初は100人規模の職員が楽天ペイの加入手続きなど観客の手助けに当たる。

<増税が追い風に>
 楽天以外の大手も東北で攻勢に打って出る。総額200億円の還元が話題を呼ぶヤフー系のペイペイ(東京)は18年10月、仙台市と盛岡市に東北の拠点を置き、本格的な売り込みに着手した。「21年9月まで手数料無料」の特典を武器に、マンパワーで営業攻勢をかける。
 消費税増税に合わせたキャッシュレス決済のポイント還元も追い風になる。東北と北海道を統括する同社の中村勝・北日本ブロック長は「飲食店や理美容店、タクシー業界を中心に広げている。アリペイも使えて東北でも個人事業主の反応は良い。まずは加盟店を増やすことだ」と意気込む。

[QRコード活用のスマートフォン決済]スマホの専用アプリの画面にQRコードなどを表示し、店舗に読み取ってもらう決済手段。店舗が示すQRコードをスマホのカメラで読み取る方式もある。アプリにひも付けたクレジットカードや銀行口座で支払う。中国では「アリペイ」と「ウィーチャットペイ」が普及。国内では楽天やヤフーなどのIT企業、ドコモなどの携帯電話企業、銀行、コンビニエンスストア、家電量販店など多業種で参入が相次いでいる。


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2019年03月06日水曜日


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