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<あの日を力に>子どもたちの選択[2]正しい知識伝えたい

卒業式後、野球部の後輩の前であいさつする石川さん(中央)=1日、多賀城市の多賀城高

◎火山研究 防災に生かす/多賀城高3年・石川智也さん(18)

 仙台市宮城野区の石川智也さん(18)は今春、山形大理学部に進学し、地球科学分野を専攻する。東日本大震災後、多賀城高(多賀城市)に新設された災害科学科で学び、東北に多い火山を研究対象に定めた。

<挑戦意欲湧く>
 震災時は宮城野区の内陸にある西山小の4年生。家族5人は全員無事だったが、自宅は半壊し、近所のブロック塀が倒れた。
 大きな地震があれば津波が来る。本で学んでいた。石巻市大川小で多くの児童や教職員が亡くなったことを知り「正しい知識があれば多くの命を救えたのに」と強い衝撃を受けた。
 災害科学科が新設されたのは2016年4月。高校の防災系専門学科は阪神大震災の被災地、兵庫県舞子高(神戸市)に続き全国2例目だ。震災の記憶を伝承し、人々の命と暮らしを守る防災知識を学べる。迷わず選んだ。
 同科担任を3年間務めた佐藤寿正教諭(42)は「人前で自分の意見をしっかりと述べられる生徒が集まった。石川さんは野球部主将を務め、リーダーシップがある。率先して被災地にも足を運んだ」と評価する。
 1年生のグループ研究の年間テーマが火山だった。火砕流対策を話し合い、地下避難の有効性を考えた。費用が膨大になり、実現の可能性は低い。解決策を見いだせなかったことで、挑戦する意欲をかき立てられた。
 災害科学科は専門家から学ぶ授業が多い。茨城県つくば市の防災科学技術研究所を訪れた際、研究員から「地中のガスを抜けば噴火の被害を抑えられるが、実現できていない」と教わった。火山を学ぶうち、深刻な被害予想に危機感を覚えた。
 1年の夏休みに熊本県を訪れ、熊本地震の被災者らの話を聞いた。情報不足による混乱があったことなどを知り、「全体を見渡す視野の大切さを感じた」と振り返る。
 3年の9月には、地震被害に遭った北海道厚真(あつま)町にも行った。地滑りした地層を見るなどして、現地調査の重要性を痛感した。

<将来は教壇に>
 山形大への進学は宮城、山形両県にまたがる蔵王山(蔵王連峰)に近い点が決め手になった。近年、火山性微動が多発し、観測が強化されている。
 今月1日の卒業式で、1期生33人を代表して卒業証書を受け取った。ほぼ全員が進学し、防災研究の第一人者の下で学ぶ生徒や災害派遣医療チーム(DMAT)を目指す生徒もいる。
 「震災を知らない子どもたちが増えている。悲劇を繰り返さないために、災害に対する正しい知識を伝えたい」
 大学で地球科学全般を学び、将来、教員として役立てたいと願う。


2019年03月07日木曜日


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